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ある晴れた日に
626部分:桜の枝を揺さぶってその四

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桜の枝を揺さぶってその四

「一ついいか」
「どうしたの?」
 明日夢がその彼に問うた。
「何かあったの?」
「お医者さんと看護士さんも一緒だ」
 このことを言った。すると彼の後ろに初老の眼鏡の白衣の男と若い美しい看護士がいた。二人は横に並んで彼の後ろに立っていた。
「この人達もだ」
「そうね」
 恵美はその医者達を見て納得して頷いた。皆病院の玄関の前で正道達を半月状に囲んでそのうえで話をしているのである。
「御願いします」
「うん、それじゃあ」
「行きましょう」
 医者と看護士が皆に述べた。
「植物園に」
「お母さんも」
「ええ、私も」
 見れば晴海もいた。彼女もなのだ。
「未晴が。やっぱり」
「そうですか。それで」
「じゃあ」
 五人が彼女に応えた。
「一緒に」
「御願いします」
「有り難う」
 その五人の言葉を感謝の顔で受けるのだった。
「それじゃあ今からね」
「大丈夫ですよ、お母さん」
「娘さんはですね」
 医師と看護士が左右から彼女に言ってきた。
「安心して下さい」
「確かにまだ感情は戻っていませんけれど」
「それでもなんですか」
「はい、体調はよくなっていますし」
「怪我も」
 見ればもう包帯はしていなかった。当然ギプスもである。そういったものは全くしていない。身体は奇麗なものに戻っているのだ。
「ですからそれは」
「大丈夫です」
「わかりました」
 晴美は二人のその言葉に安心した顔で頷いた。
「それじゃあ今から」
「行きましょう」
 こうして彼女も行くのだった。そうして植物園に入る。
 植物園の中はあらゆる花が咲き誇っていた。それこそ日本の花だけではない。異国の様々な花も咲き誇っていた。その中には。 
 高原を模した場所にはだ。そこは完全に建物になっていてガラス張りである。その中に欧州の高原を模していたのである。
「おい、この花って」
「そうよね、あれよね」
「エーデルワイス」
 それなのだった。そうした花まであったのだ。
「うわ、こんなものまであるの」
「何でもあるって聞いたけれど」
 明日夢と凛がこのことにまず驚いた。その高原のところに白いエーデルワイスが何輪も咲いているのである。小さいが確かにそこに。
「エーデルワイスまで」
「それもこんなに奇麗に」
「こんな奇麗なエーデルワイスって」
 桐生もその高原の中で言う。
「それこそ本の中でしか見たことないよ」
「そうね」
 恵美もそうだというのだった。
「日本じゃ見られないわね」
「それはね」
 桐生は彼女にも応えた。
「本当に」
「未晴ってエーデルワイス好きなのよ」
 咲がふと言ってきた。そのホークスの帽子とゴスロリに黄金のリュックはそのままだ。

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