620部分:やがて来る自由の日その十
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やがて来る自由の日その十
「それで他にもね」
「あの誘拐事件とかもですか」
「ええ。誘拐未遂ね」
こう訂正されはした。だが誘拐なのは事実であった。
「その事件の犯人もどうやらね」
「小さい女の子を狙った」
「他にもよ。公園の花壇とか学校の動物とかも」
「えっ・・・・・・」
田淵先生はそこまで聞いて顔を蒼白にさせた。酔いも一気に醒めてしまった。
「まさかそれまで」
「みたいよ。主任先生が警察の親しい人から聞いたそうだけれど」
「その警察も捕まえられないんですよね」
「証拠もないし圧力もかけられているから」
だから捕まえられないのだという。警察が弱い二つのことだ。警察は本来圧力には強いがだ。ここでやり方があるのである。
「抗議電話とか抗議団体が連日連夜殺到してね」
「それで警察も黙らせてですか」
「ああした団体の十八番なのよ」
それをしているというのだ。
「それで黙らせるのよ」
「警察ですらも」
「しかもマスコミも相手にしないといけないから」
「余計に」
「マスコミの力は絶大よ」
特に日本においてはそうだ。マスコミの無法が何処までも許されてきたのが戦後日本だ。今でもその残照が残っている。そしてそれが今の事件にも関係しているのである。
「だからね」
「それで」
「そうなのよ。本当にどうしようもないわ」
「それじゃあ私達ができることは」
「あの娘達を見守って」
江夏先生は沈痛な面持ちで述べた。目にその心がはっきりと出ていた。
「それで私達も」
「竹林さんの為に」
「そうするしかないわ」
まさにそれだけだというのだ。
「本当にね」
「そうですか。それだけですか」
「けれどね」
しかしであった。ここで江夏先生の言葉の色が変わった。
「いいわよね」
「はい」
「絶対に竹林さんを」
「元に戻す」
「それよ」
二人の顔が変わった。絶望から希望にだ。
「私達のできることはそれだけでも」
「それだけは絶対に」
「しましょう。何があってもね」
「あの子達も頑張ってますからね」
「生徒に何かあったらね。その時は」
「担任は身体を張ってもですね」
「だから」
その通りであった。二人共そのことはよくわかっていたのである。
「何があっても諦めないで頑張りましょう」
「そうですね。それじゃああの子達のことで病院が難色を示したら」
「私達でね」
「竹林さんを外に出せるようになった時と同じで」
実はその時は二人が病院に話したのだ。だから正道も未晴を外に連れ出せるようになったのだ。そうした裏事情があったのである。
「そうしましょう」
「はい、それで」
「それじゃあ」
ここまで話すとだった。江夏先生はその手にあるチューハイを飲んだ。
田淵先生も
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