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聖国のジルフリーデ 〜勇ましき姫と気高き女騎士と、男勝りな女戦士と妖艶な女盗賊は、媚薬の罠に乱れ喘ぎよがり狂うも、心だけは屈しない〜
最終話 聖国の女傑達は、それぞれの道に歩み出す
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その「異変」の根源を追う彼女はやがて、城下町を一望できる丘へと辿り着くのだった。
「……」
そこに居たのは――岩に腰掛け、城下町の景色と澄み渡る青空を眺めている、1人の青年。
帝国軍人のような気配だったことから、敵方の斥候ではないか、と睨んでいたジルフリーデにとっては――想像から掛け離れた風体であった。
ボロボロに擦り切れた青い服。くたびれた赤いマフラー。傷だらけの木製の盾に、刃こぼれだらけの銅の剣。
下級貴族に雇われた傭兵でも、もう少しマシに武装しているだろう。物乞いがありあわせの物で剣士ごっこに興じているような姿だ。
到底、帝国に与するような戦士だとは思えない。便衣兵という線もあるが、それにしてはあからさま過ぎる。
「……旅の方、ですか? ここは立ち入り禁止区域ですよ」
「あぁ……すみません、道に迷っていまして。それにここ、すっごく眺めが良いですし」
どちらにしろ、ここは王族以外立ち入り禁止となっているのだから、退去してもらうしかない。そう思い立ち、咎めるように声を掛けるジルフリーデに対して――青年は柔らかな笑みを浮かべて振り返り、悠然と立ち上がる。
「……!」
その瞬間。ジルフリーデは思わず、息を飲んでしまう。
あのアイラックス将軍を彷彿させる、艶やかな黒髪と――見ているだけで吸い込まれてしまいそうな、彼の瞳に。
「……道に迷った? どちらに行かれるおつもりで?」
「王国の城下町ですよ。地理的にもこの辺りがそれっぽいな、と思って来たんですけど……ちょっと違うみたいで」
「王国でしたら、この森を東に抜ければ国境線を抜ける道に出られますわ。……残念ながら、ここは聖国です。確かに少し、似ていますけどね」
「なるほど、それは失礼しました。じゃあジブン、もう行きますね」
気を取り直して、彼が望む目的地の方角を伝えるジルフリーデに対し、青年は朗らかな笑顔と共に一礼すると――悠々とした足取りで歩み出して行った。
「あのっ……あなた、お名前は?」
その後ろ姿と、風に揺れる赤いマフラー。そして、見る者を惹き付ける黒髪に、思う所があったのか。
どこか赤の他人とは思えない彼に――ジルフリーデは思わず、声を掛けてしまう。
「……ダタッツ、です」
そんな彼女の問いに、青年は一瞬だけきょとんとした表情を浮かべると――微笑と共に、己の名を告げる。
その一言を最後に、今度こそ立ち去って行く彼の背が見えなくなるまで――ジルフリーデはずっと、見送り続けていた。
「……ダタッツ……」
何かはわからない。ただ、確かに何かを感じたのだ。
あの青年に。ただの旅人でしかないはずの、あの青年に――。
◇
――私達が暮らすこの星から、遥か
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