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聖国のジルフリーデ 〜勇ましき姫と気高き女騎士と、男勝りな女戦士と妖艶な女盗賊は、媚薬の罠に乱れ喘ぎよがり狂うも、心だけは屈しない〜
第9話 汗ばむ淫らな女傑達は、媚薬の罠に勝利する
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「ぬぅうぅうッ……!」

 帝国軍にとっては、最悪の誤算であった。ジルフリーデ達4人を過小評価し、抹殺より生け捕りによる「調教」を優先した結果――王国軍に攻め込まれる隙を与えてしまっていたのだ。
 このまま戦っても、待つのは敗北と死。その現実を突きつけられたアンジャルノンは、口惜しげに唇を噛み締めながら――ジルフリーデ達を一瞥する。

「……撤退だ、全軍撤退ッ! この怨みは、次の戦場で晴らしてくれるわッ!」

 そして、僅かな逡巡を経て。全軍の撤退を宣言すると――残りの帝国兵達を指揮するべく、窓辺から城下町へと飛び降りていくのだった。

「……!」

 報告に来た帝国兵も、ラフィノヴァ達に怯えたような視線を向けた後、そそくさと走り去って行く。
 寝室に残された聖国の女傑達が、開かれた窓に視線を移し――状況を飲み込んだのは。それから、しばらくの時が過ぎた頃であった。

「王国軍が……救援に……?」
「じゃあアタシ達……勝ったってことか!? やっ……やったぁあ!」
「姫様、王妃様ぁ! 勝利です、聖国の勝利ですっ! 我々は最後まで……アンジャルノンに屈しなかったのですっ!」
「あぁ、ぁあっ……ラフィ、ロザ、ベナ、ありがとうっ……! 母上ぇえぇっ!」
「ジルぅうぅっ!」

 そして、自分達の勝利を悟った彼女を飲み込んだのは――歓喜の渦であった。開かれた窓から媚薬の香が抜け、快楽の罠から解き放たれた彼女達5人は、固く抱擁を交わし、涙する。
 これまでの苦闘は全て、今日という勝利のためにあったのだと。心の底から叫び、その喜びを分かち合うために。

 ――今は亡き、この聖国の王に。自分達の勝利を、捧げるために。

 ◇

「……ルーク。この聖国は、私のような『英雄』がいない国だから……簡単に帝国に敗れたのだと言う者もいるそうだな」
「えぇ……今となっては、馬鹿馬鹿しい話ですな」

 その頃、王国軍による進撃が続く城下町では。
 馬上から大剣を振るい、帝国軍の残党を蹴散らす「英雄」が――この戦場を制圧しようとしていた。

「全くだ。……いるではないか、彼女達という『英雄』が」
「そうですな……本当に、その通りです」

 蒼い甲冑を纏い、この世界では珍しい黒髪を靡かせる「英雄」は――ジルフリーデ達がいる王城の最上層を見上げ、側近の騎士と共に呟く。

 それは――絶望の淵から立ち上がり、抗い続けた彼女達に対して。1人の武人として捧げる、最大の賛辞であった。

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