第91話 ペットは最期まで責任をもってお世話しましょう
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二人きりでいた。
「久し振りね九ちゃん。帰って来たんだったら連絡くらい入れてくれればご挨拶に伺ったのよ」
「気遣い有難う妙ちゃん。だけど、僕が帰って来た事は家の人間は誰も知らないんだ。誰よりも早くこの事を妙ちゃんに知って欲しかったからね」
「九ちゃん・・・」
見つめあう二人。この場には今二人しかおらず、しかも此処は見合いとかデートとかそう言った大事な場面で良く使われる施設な為に無駄な騒音も演出もない。
静かな時の流れだけが二人の間を支配していた。
そんな静かな時を破るかの様に突然瓦のような物が砕ける音と野獣の叫びのような物が響き渡って来た。
「何? 今の悲鳴は」
「・・・・・・」
咄嗟にその悲鳴を聞いたお妙の視線が一瞬九兵衛の視線から外れた。
そう、本当に一瞬だった。その一瞬の内に九兵衛はお妙を後ろからそっと抱き寄せ、彼女と密着したのだった。
「ちょっ! 何?」
「会いたかった・・・ずっとずっと・・・会いたかったよ、妙ちゃん」
「九ちゃん・・・」
「前に約束したよね。僕が強くなったら・・・僕のーーー」
【僕の・・・股の玉になってくれる・・・て】
「はっ!!!」
九兵衛のその一言にお妙は頬を染め、口元を抑えた。そう、それは彼女が過去に交わした約束だった。
何気ない、子供同士の他愛無い約束。だが、九兵衛はそれを愚直に守り通して今お妙の前に現れた。
「僕は強くなった。今度は妙ちゃんが約束を守る番だ」
「・・・九ちゃん・・・御免なさい。それは出来ないわ」
「どうしてだい?」
「家の事情・・・九ちゃんなら知ってるでしょ?」
お妙のその一言に、九兵衛は静かにうなずいた。
「知ってるよ。ご両親を亡くされたんだよね」
「今、私が九ちゃんの元へ嫁いだら、弟は独りぼっちになってしまうの。あの子はまだ独り立ちするには弱いし幼い。姉である私があの子を見守っててあげないといけないの」
「新八君の事か・・・相変わらず姉離れが出来てないんだな。だが、彼ももう16だ。いつまでも妙ちゃんがそばに居たんじゃ、彼は何時まで経っても一人で生きていく事なんてできやしない」
「それは分かってる! でもーーー」
その時だった、突然天井が音を立てて崩れ落ち、更に其処から新八と謎の美少女が重なり合う形で振って来たのは。
「と、言う訳さ」
「何だよそれ・・・何だよそれぇ! 昔の、子供のころの約束だか何だか知らないけどふざけんな! 人の姉を勝手に嫁に貰うなんて一方的にも程があるじゃないか!」
「約束は約束だ。それに、妙ちゃんの方も既に了承している」
「え? あ、姉上・・
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