純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 26
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ないな。振動とは物質が動いた軌跡であり、他の物質の動き・現象……光の方向性をも左右する物。視覚は網膜が光を受容して生まれる感覚。私を構成する物質が放つ音の総てを消すとは、要するに生体反応に加えて私の輪郭を浮き上がらせる光と影の動きを無かったことにしている状態だ。もっとも、周囲への感覚情報を無にしているだけで、水中の鈴と同様、私が此処に居る事実も変えられないのだが』
「ああ。アオイデー本体は見えなくなったが、其処に居るって確信を持ってしっかり観察していれば、痕跡は目に映る。ロザリアの髪が一部だけ歪んで見えたのがそれだな。だがそれも、目を皿にするほど具に丁寧に観察していなければ違和感にもならない。友人の力ってのは、明らかにおかしい事象をおかしいと思わせない作用があるんだな」
「気配を生体反応とするなら、気配を察するとは即ち、其処に何らかの生物が居ると認識している状態。逆に、気配を感じなければ其処には誰も居ないと判断している状態、と言えますわね。他者の目を厭う暗部の人間達でさえ、誰も居ないと判断した安全な場所では、用心深く警戒し続けるとしても、長時間探り続けようとはしないものです。日常生活の中のごく小さな変化に暗部以上の注意を払う常人など、居たとしても稀有な部類でしょう」
「注意を引くってのは、興味を引くってのと同義。お前は、周りからの好奇心や関心をその力で削ぎ落しまくって来た訳だ。んで、周りの目が自分には決して向かない事実を都合良く利用して、フィレスの尻を延々追い掛け回していたと」
え。何それ。
周辺の人間どころか本人からも見えない所でフィレスさんをずーっと観察してたって話?
やだ怖い。
ロザリア様もこそぉーっと後退って、リーシェさんを抱えて立つクロスツェルさんの左腕を右手でそっと握った。
『…………お前、いい加減にしておかないと、そろそろ本気でぶっ飛ばすぞ?』
「おお、怖い怖い。しかし、良いのかなー? 「私」はフィレスが仕えてる人間だ。「私」を害した場合、フィレスはお前の敵になるぞー?」
ピルルルル……と鳴きながら頭を低くして睨むアオイデーさんを、お父様は鼻で笑う。
フィレスさんは何も言わないけど、少々困り顔だ。
悔しげに沈黙した小鳥を見て勝利を確信したのか笑みを深めたお父様は、けれど次の瞬間。
『……よっぽど悪魔……バケモン……』
「すみませんすみません、卑賤の身でありながら貴き御身の御威光を貶める無礼千万で厚顔無恥な振る舞いの数々を見苦しくも披露してしまいましたこと、心より伏してお詫び申し上げます故、何卒それだけは空より高く海より深い寛大な御心の内に秘めていただきたく、どうかどうか赦してください、お願いしますお願いします!!!!」
スパッと真顔に切り替わり、残像も
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