暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 26
[4/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
『それだ。私はその場に居合わせていたんだ』
 「けどあの周辺、女悪魔以外には誰も居なかったみたいだけど?」
 『私は気配を完全に消していたからな。ほれ、こうすれば見えないだろう?』
 「!?」
 言うが早いか、アオイデーさんの姿がパッと消えた。
 素早く飛び上がったのかと周りを確認しても、確かに居た筈の小鳥は室内の何処にも見当たらない。
 「……納得致しましたわ、アオイデー様。これでは常人が気付けないのも頷けます」
 冷静にロザリア様の頭部だけをじっと見つめていたプリシラ様が、慌て出した彼女の動きを持ち上げた右手で制し、一歩手前まで歩み寄る。
 そしてロザリア様の額辺りに人差し指を差し出し、その側面に消えた筈の小鳥をちょこんと乗せて離れた。
 「ははぁーん? なるほどな」
 どうやらアオイデーさんは全く動いてなかったらしい。
 隠し芸か魔法か悪戯かって場面で一切動揺しなかったプリシラ様とお父様の神経は、常人とはかけ離れた特殊な構造をしているという認識で良いんでしょうかね?
 「初めて会った時もご友人の力で生物の気配を消していると仰っていましたが、それは力や気配を隠す静謐の泉の水と同じ仕組みなのでしょうか?」
 『いや、あれとは少し違う』
 フィレスさんの問いに、小鳥は小さな頭をくりくりと横に振る。
 『そうだな……気配とは、生体反応そのもの。生物を構成する目には見えない小さな物質とその他の物質が衝突する度に生じる、極小の変化だ。この世界の生物は、その変化を視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚なんかで感じ取ってから識別している。此処までは良いか?』
 「はい」
 『まず、精霊達が住む泉の水は、対象の変化に混じり物が一切無い水気を大量に纏わせて、周囲への感覚情報を惑わせているに過ぎない』
 「感覚情報を惑わせる?」
 『例えば、金属製の鈴。地上で振れば普通に聴こえる音も、鈴だけを広く深い水底に沈めてしまえば、地上からは聴こえ難くなるだろう? 底が深いほど直接触るのも難しくなるし、金属特有の匂いも感じようが無い。だが、混じり気が無い純粋な水は何処までも透明で、外側に周囲の虚像を映して実像に重ねたとしても、内側に抱いた鈴そのものは消し去れない。水の性質だけじゃ、視覚は完全には遮断できないんだ』
 「……言われてみれば、泉の水でずぶ濡れになったべゼドラさんはしっかり視認できていましたね……。つまりそれが、力や気配を「消す」のではなく「隠している」状態、という訳ですか」
 『その通り。そして私の場合は、私を構成する物質が放つ音の総てに、相殺する為の音をぶつけている』
 「自らが出す音を(ことごと)く消している、と? ですが、音を消しただけで姿まで消せるものなのですか?」
 『単純な音ではなく、振動と捉えたほうが理解しやすいかも知れ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ