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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode6『仲直り・後編』
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…迷惑だから出ていけって事でしょ……?私だってよく分かってる……でも、それがわかって、わたしはどうしたら良いの……?わたしはただの子供、相手は製鉄師の組織、抵抗なんてできっこない。たとえ誰かに迷惑を掛けるって分かってても、差し伸べられた手を掴んで必死で握り続けるくらいしか、わたしには出来ないの……!」

 ヒナミとて理解している。自分が助かるために他の誰かを危険に晒しているなど、ずっと心の内で反芻し続けてきた客観的事実だ。願わくば誰にも迷惑など掛けたくないし、自分のために誰かが傷つくなど、考えるだけで心臓がつぶれそうになる。だがそれでも、怖いものは怖い。縋っていいと手を伸ばされたなら、その手を取る以外の選択肢はなかった。

 自己を正当化するつもりはない、迷惑極まりない行動なのは百も承知、その上でヒナミは(こいねが)うしかない。

「……おねがい、おねがいします。お手伝いでもお仕事でも何でもする、しますから。ここに居させてください、ここに匿ってください……!例え仮初だったとしても、もうわたしには、ここしか、居場所がない……」

 消え入るような声で懇願する。卑怯だと分かっていても、シンの憐憫に訴えかける。ここで捨てられてしまったら、もうヒナミは確実に生きてはいけない。

 たとえここで暮らせても、待っているのは恐怖に怯える日々だけだろう、幸福にたどり着ける時など、ヒナミには決して訪れない。
 だがそれでも、捕まりたくない。この地から離れたくない。惨めに震えるだけの生であったとしても。


『よう、俺の次の花嫁』


 あの、炎の男が連れていた――否、“持ち運んでいた”魔女のようには、決してなりたくなかった。



「……え?ちょ、ちょっと待って。なんか、また勘違いされてないかな……?」

「……?」

 不意に、困ったような声でシンがそう呟いた。
 シンは自分の胸元に額を擦り付けるヒナミの肩を以て顔を上げさせると、まだ残っていたアイスの一掬いをヒナミの口に押し込んでくる。困惑する彼女に微笑んで優しく頭を撫でたシンは、落ち着かせるように穏やかな口調で言葉を並べ始める。

「心配しなくても、追い出したりなんかするもんか。僕が言いたかったのは、君があいつらに対抗するための可能性の話だよ」

「対抗するための、可能性……?」

 シンが言い放った言葉の意味が一瞬上手く読み解けなくて、その言葉を復唱する。逃亡するでも、隠れるでもなく、シンが選んだ言葉は対抗。
 その言葉は即ち、“製鉄師達を追い返そう”という意思の表れ。あまりにも無謀な挑戦の意志だ。

「で、出来る訳ない。製鉄師には『魔鉄の加護』があって、同じ製鉄師じゃなきゃ戦う事も……!」

「そう、今自分で言ったじゃないか。|製鉄師なら戦
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