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ある晴れた日に
606部分:アヴェ=マリアその六
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アヴェ=マリアその六

「崩れるものだからね」
「ガラスみたいなものよ。けれど」
「けれど?」
「完全には壊れないものなのよ」
 今度は竹山に返した言葉だった。
「完全にはね」
「ガラスは簡単に割れるじゃない」
「ガラスでもあり柳でもあるのよ」
 それだというのだった。桐生に対して。
どちらでもあるのよ」
「どちらでもなんだ」
「そうよ。壊れやすいけれど完全には壊れにくい」
 竹山に応えながらさらに言う。
「そして時間やきっかけが元に戻してくれるものよ」
「それじゃあ今から」
「その絆が」
 明日夢と茜は今ごくり、と喉を鳴らした。
「戻るの」
「五人の」
「来たわ」
 そしてだった。遂にその奈々瀬が教室に入って来た。彼女が教室に入り暫く進むとだった。
「あの」
 彼女だけではなかった。五人が一斉に顔をあげて一斉に言ってきたのだった。
「えっ、まさか」
「五人一度なんて」
 これには明日夢も茜も驚きを隠せなかった。今のほぼ同時に顔をあげて声を出した五人を見てであった。
「一緒のこと考えてたっていうの!?」
「五人共」
「何だよ、同じかよ」
「同じこと考えてたのね」
 春華と凛がここで微笑んだ。
「そういうことかよ」
「皆同じだったのね」
「そうね」
 奈々瀬の表情はまだ強張っていた。それでも頷いたのだった。
「同じだったのね。本当に」
「それじゃあいいわよね」
「もう迷わないわね」
 静華と咲も言う。
「それじゃあ」
「未晴の為にね」
 言い合いながらゆっくりと前に出てだった。五人はそれぞれ向かい合った。そうして互いに手を出してその手を拳にして突き合わせるのだった。
「もう何かあってもな」
「ええ」
「迷わない」
「絶対にね」
「未晴、元に戻すわよ」
 その五人それぞれの言葉だった。
「そういうことでな」
「うん」
 これで終わりだった。五人は元に戻った。皆唖然とするが恵美だけはそれを見て微笑んでいた。
 その日の昼休みだった。明日夢と茜は恵美をあの屋上に呼んでそこで話をするのだった。話をしながらそれぞれサンドイッチやパンといった昼食を食べている。
「それでだけれど」
「聞いていい?」
 二人はベンチに座って向かい側のフェンスに背をもたれかけさせて立っている恵美に問うた。三人共今パンと牛乳を手にしている。
「あんただけはわかってたみたいだけれど」
「五人が元に戻るってね」
「何があったのよ」
「奈々瀬が来たのよ」
 その昨日のことを話す恵美だった。
「あの娘がね」
「私達が帰った後でなのね」
「その時に」
「そうよ。それであの娘言ったのよ」
 具体的なことは隠して話すのだった。
「やっぱり未晴の為にってね」
「成程ね」

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