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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いは紅涙と共に
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もなく、如月彩斗にだけ零した少女の本音が──。


「寂しくなって甘えたくなったら、誰かに甘えればいい。弱音を吐きたくなったら、誰かに言えばいい。泣きたくなったら泣けばいいだけの話だよ。抱え込んでしまうのが、君自身にとって最悪なんだからね。その相手がいない君じゃないでしょう。気位の高い君のことだから、弱気は見せたくないって言うでしょうけれども……。隣に身を置ける相手がいることも必要だよ。別にそれが如月彩斗でなくても構わないし、他にそういう人がいるのなら、その人は大事にしてね」


アリアは泣き腫らした目元を拭い拭い、赤紫色の瞳を瞬かせながら頷いた。それは勝気な少女が自らの弱気を認めた一刹那であると同時に、彼女以外の人間にも甘えを見せた一刹那だった。
彼女の隣に居れるのが自分でありたいとは、微塵も思っていない。ただ万が一にも隣に居てくれるというのならば、それだけの努力はするつもりだ。或いは、彼女と交流のある人間のなかで、自分の隣を彼女にとって最も居心地が良くできるように──という努力も、惜しんではいない。

アリアのため、と思いながら行動してしまう節が無いわけではない。むしろ多分にある。その行動の源泉は何処にあるのだろうと思うたびに、いつも自分の答えはだいたい似ていた。それは自分自身のお人好しな気質と、彼女に対する清廉無垢な感情から来ているのだ。その2つだけだ。
恐らくこの源泉は、増えることはあれど減ることはないだろう。何故だかそう確信できる。

「……だったら」おもむろにアリアは呟いた。細々とした声だった。
「甘えたくなったら、彩斗に甘える。たぶん弱音だって吐くし、泣いちゃうこともあるかもしれないけど、絶対に抱え込まない。……アタシなんかのことを分かってくれてる、たった1人のパートナーだから。だから、大事にする。何かあっていちばん頼れる人が、彩斗しか居ないもん」

彼女は話の途中で、幾度かその赤紫色の瞳を自分から逸らしていた。頬が紅潮しているのは、きっとお風呂上がりで上気しているからではないのだろう。泣き腫らした目元と同じくらいの色をしていることを自覚しているらしい彼女は、「でも」と語調を強めて話を続ける。


「……彩斗ばっかりに、そういうのはさせたくない。自分だけがやるのは、なんか嫌。だから、彩斗も同じことをアタシにしていいよ。甘えたくなったらアタシに甘えて、弱音を吐きたくなったらアタシに言って、泣きたくなったら泣いていいよ。慰めてあげるから。……ね?」


──こんな彼女がときおり見せる優しさだからこそ、やはり、自分は彼女に惹かれているのだ。
その優しさには、微笑を浮かべ返すくらいが、関の山だった。
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