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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いは紅涙と共に
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氣を吸収するという点にあるんだ」
そう言った時の訝しげな白雪の表情を、脳裏に思い返してみる。
「持ち主が本家の人間なら誰でも、それぞれの持つ固有の氣を把握して、どうやら《緋想》はそれぞれに固有の能力を与えてくれるようでね。自分の場合は《明鏡止水》というんだ。五感が鮮明になって、時間の流れが非常に緩やかになって見える。大刀契とは氣を媒体にする妖刀だよ」
そんな具合の説明を続けたところで、白雪はある程度の納得が出来たらしかった。「興味深いお話を聞かせていただいて、ありがとうございました」と慇懃に叩頭されてしまったから。
それにしても、ここまで白雪が興味を持つとは思わなかった。こちらもこちらで話す内容の選別に苦労したし、何より相手はキンジやアリアとは違って、星伽一族の巫女なのだから──。
そこまで考えを巡らせていると、不意に扉のあたりから声が聞こえた。「ねぇ、彩斗、今って入っていい?」それは感情を押しとどめたように静静とした、アリアの声だった。少しだけ開いた扉の合間から顔を覗かせながら、その赤紫色の瞳はこちらの様子を窺い見ているらしい。
「いいよ。何か用でもあるの?」
「うん」
アリアは力強く頷いた。そうして扉を閉めるが早いか、いつもより軽い足取りで、そのまま一直線に自分の居るベッドの上へと駆け寄ってくる。彼女は両膝をそこに立てながら、寝具についた華奢な腕を支えにして、上気したような頬と前髪に隠れた赤紫色の瞳で、自分を見つめてきた。
入浴を済ませてきたのだろう──額や頬のあたりにはまだ水滴が残っているし、下ろした髪からは洗髪剤の芳香も鼻腔を香ってくる。彼女特有の梔子らしい香りもまた、それに混じっていた。
「──っ、何の……つもり?」
平生の彼女の行動とは似つかない、その艶やかな雰囲気に呑まれかけているのを感じていた。何のせいか締まりきった咽喉を震わせながら、泰然を繕う様を気取られぬように努力もしていた。
アリアはそれに一瞥もくれないまま、「あのね」と呟く。泡沫のような声遣にさえ、今の彼女の胸の内がありありと浮かみ現れていた。泡沫のように消え入りそうで、そして弾けた声だった。
「司法取引のおかげで、ママの最高裁での刑期が大幅に減刑されるだろうって! 裁判で理子が証言するのはまだ先だけど、《武偵殺し》の122年ぶんは確実──って弁護士先生が電話でさっき話してくれたの。それでね、まだあるのよ? 理子が言ったらしいんだけど、『自分の今後の武偵活動の復活を条件に』っていうことで、《イ・ウー》についての情報まで話したみたい!」
アリアの吐き出す言葉は、全てが色彩に満ち満ちていた。胸の内から吹き零れるような喜悦を隠そうともしないままに、彼女は何度も何度も前かがみに自分の顔を覗き込みなが
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