第五十話 再び向かい合いその九
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「しかし伊達家も」
「それが戦国ですが」
「戦国といえど法は法です」
「だから伊達家をですか」
「わたくしは許せなく思います」
「では」
「関東の仕置きの後で、ただ」
政虎はこうも言った。
「西国のことも気になります」
「西国ですか」
「公方様は管領であられる細川家やその家臣である三好家に脅かされています」
「その様ですな」
今度は憲政が応えた。
「その中で松永弾正殿が大きくなっているとか」
「西国も何とかせねばならぬやも知れませぬ」
「では」
「西国のことも」
「気になるところですか」
「特に織田家が」
政虎もまた信長のことを言うのだった。
「気になります」
「確か尾張のうつけ殿でしたな」
「とんでもない。あの方はうつけではありません」
「その実は、ですか」
「天下の異才かと」
信長についてこう評するのだった。
「必ずや雄飛されるでしょう」
「尾張からですか」
「この天下に」
「まさかと思いますが」
「いえ、間違いなくです」
政虎はさらに言った。
「あの御仁はです」
「天下にですか」
「大きく羽ばたきます」
「そうなのですか」
「是非あの御仁の力をです」
「天下にですか」
「役立てて頂きたいです」
こうも言うのだった。
「武田殿と並んでわたくしを助けて欲しいとです」
「天下を戻す為に」
「そして再び民が戦に怯えずに済む世の中にする為に」
是非にというのだ。
「そう考えております」
「織田殿のことをそこまで買っておられますか」
「はい、今川家が尾張を狙っていますが」
政虎は既にこのことを知っているのだ。
「しかし今川殿でもです」
「織田殿にはですか」
「勝てません、むしろ」
「敗れると」
「織田殿の下には多くの優れた家臣に一万五千の兵と」
そしてというのだ。
「優れた武具がありますので、特に鉄砲です」
「鉄砲ですか」
「はい、これがです」
特にというのだ。
「織田家は多く持っていますし」
「近頃虎千代殿も買っておられますな」
その鉄砲をとだ、憲政は政虎に話した。
「左様ですな」
「はい、ですが数は」
「少ないですか」
「越後も都や堺から遠く鉄砲鍛冶もおりませぬ」
「都や堺で多く売っているとか」
「そうです、しかしそちらまではです」
とてもというのだ。
「当家に人は中々送れず」
「買おうにもですか」
「中々、買えてもです」
その数がというのだ。
「少なく多く揃えたいですが」
「そうはいっていない」
「そうです、ですが織田家は」
この家はというと。
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