600部分:誰も寝てはならぬその十八
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誰も寝てはならぬその十八
「一体何があったのよ」
「別に何も」
ばれていても言葉では誤魔化す彼女だった。俯いてアルバムを見たままである。
「何もないわ」
「そう。そうなのね」
「そうよ」
そう言って誤魔化そうとするが無駄だった。母の方から言ってきた。
「あんたは子供の頃からね」
「子供の頃から?」
「何かあったらアルバム見てるわね」
そのことを指摘したのだ。実はそうだったのだ。これは彼女の癖なのだ。
「ずっとね」
「・・・・・・・・・」
「それでいつも考えてたわね」
「そうかしら」
「そうよ。だからね」
さらに言う母だった。
「わかったのよ」
「そうだったの」
言葉は自然と認めるものになっていた。彼女が意識しないうちにだ。
「それで」
「それであんたどうするかよ」
「どうするかって?」
「迷ってる時はどうするか」
今度はそれを言ってきた彼女だった。
「お母さんいつも言ってるわよね」
「ええ、それは」
「人の方を選びなさい」
こう告げたのだった。
「人の方をね。いつもこう言ってるわよね」
「ええ」
「そういうことよ」
ここまで話してにこりと笑うのだった。
「人の方をね。自分のほうじゃなくてね」
「人の方を」
「そう、人の方をよ」
また言う母だった。
「わかったわね」
「ええ。それじゃあ」
「お母さんが言いたいのはこれよ」
「そうなの」
「わかったらいいわね」
「うん」
そうしてであった。母のその言葉に頷いた。
「それじゃあ咲は」
「人の方を選びなさい」
また言う母だった。
「いいわね」
「人の方を」
「いつも言っている通りよ」
今度は娘に対して微笑んでみせての言葉だった。
「それはね」
「そう。いつもね」
「それによ」
さらに言う母だった。
「咲だってそれはわかってるでしょう?」
「わかってるって?」
「だから今アルバム見てるんじゃないの?」
そのことを指摘したのだった。それをだ。
「そうして熱心にね」
「それは」
「いつも困ったらそうして見てるけれど」
それはそれだけの理由ではないというのだ。
「それは皆のことを考えてるからでもあるのよ」
「そうだからなの」
「そうよ。だから今もそうして未晴ちゃん達見てるじゃない」
「未晴を・・・・・・」
「未晴ちゃんに何があったのかは知らないわ」
これは実際に知らなかった。彼女もそこまでは知らなかった。この家で未晴に何が起こって今どうなっているのかを知っているのは咲だけなのだ。
「それでもね。今学校には来てないのよね」
「ええ」
それは事実だった。もう隠せなくなっていた。
「それは」
「それだったら未晴ちゃんの為に何かしなさい」
こ
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