第百十四話 長田にてその九
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「一切しない」
「それがいいですね」
「変に恨まれる様なことはしない」
英雄は落ち着いた声で話した。
「ましてや自分から進んでするなぞ愚かだししかも」
「しかも?」
「自分がされたらどうか」
こうも言うのだった。
「一体な」
「傷付きますね」
「それがわかっているからな」
「人の失恋は、ですね」
「囃さない、そしてな」
「一度断られたなら」
「そこで諦める」
こう言って実際にだった。
英雄はその女お静が来るのを待った、その間大坂城で政を行っていたがやがて長田の方からだった。
大坂城に一人の女が来て文の話をしてきたと城の大手門を守る男から言ってきた、その話を聞いてだった。
英雄はすぐにだ、こう言った。
「通せ」
「はい、この御殿までですね」
「そうしろ」
門から来た兵に答えた。
「いいな」
「わかりました」
兵も答えてだ、そしてだった。
兵は大手門に戻った、英雄はその兵の背を見送ってから共にいる当季に語った。
「これからだな」
「告白するんじゃな」
「そうする、しかしだ」
「断られたらじゃな」
「その場合のことを考えている」
「終わりじゃな」
「そうなる、その時は仕方ない」
当季にもこう言うのだった。
「縁がなかった」
「そういうことじゃな」
「そう思うからだ」
だからだというのだ。
「これから勝負だが」
「それでもじゃな」
「是非告白を受けて欲しいが」
「それはのう」
「わからない、実は不安だ」
表情は変わらない、それでもなのだ。
「どうなるかな」
「それはそうじゃのう」
「戦や政の時もな」
「顔には出んでもな」
「勝てるか、成功するかとな」
どうしてもというのだ。
「不安になるが」
「恋愛もぜよ」
「不安になる」
「そうじゃのう、わしもじゃ」
当季もとだ、彼は英雄に今は真剣な顔で述べた。
「どうしてもじゃ」
「告白の時はか」
「受験の合格発表の時もそうじゃったが」
努力が実るか運命がどうなるか、そう思うからこそだ。誰もが受験の合格発表にはそうなってしまうものだ。
「中学の時ぜよ」
「女の子にか」
「思い切って告白したぜよ」
「その時はか」
「不安で逃げたかったぜよ」
「その場からか」
「告白せんと相手の娘とは付き合えん」
このことはわかっていたというのだ。
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