第五章
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「うちで仕入れさせてもらっている和菓子屋さんのね」
「その和菓子ですか」
「この船場のとびきりの和菓子屋さんよ」
「そのお店の和菓子ですか」
「今からどう?」
「お願いします、私和菓子大好きで」
美和子は亜弓に目を輝かせて応えた。
「お饅頭も羊羹も」
「好きなのね」
「はい、何でも」
「じゃあお茶も出すから」
こちらもというのだ。
「皆でね」
「これからですね」
「お礼でね」
「船場のお菓子なら」
それならとだ、裕貴はこんなことを言った。
「織田作之助さんも食べてたかもね」
「ああ、大阪で生まれ育った作家さんね」
「戦争前と戦後に活躍したね」
そして戦争中にもだ。
「あの人もかな」
「わたくしあの人のことはよく知らなくて」
織田作之助についてはだ、亜弓はこれまでとは違いどうかという顔で述べた。
「そのおことはね」
「ちょっと言えないんだ」
「どうも。けれど美味しいから」
これは保証するからというのだ。
「好きなだけ食べてね。それで優斗様も」
「僕もだね」
「召し上がって下さい」
「僕あまり何もしていないけれどいいのかな」
「いいんですよ、一緒にここで探してくれましたから」
でれでれとした態度で彼に言うのだった。
「どうぞ一緒に」
「そこまで言うのなら」
「はい、お願いします。じゃあ貴方達も」
また裕貴達に言ってだ、四人で蔵から見事な和風の屋敷に入った。そうしてお菓子とお茶で今度はそちらで楽しい時間を過ごしたのだった。
後日裕貴はこのことを学園の新聞に書こうと思ってクラスで亜弓に許可を得る為に話したが亜弓は妖怪のことは快諾したが。
それでもだ、許嫁のことはこう言うのだった。
「恥ずかしいからね」
「そのことはなんだ」
「書かないでね」
「別に書いてもいいんじゃ」
「恥ずかしいから駄目よ、いいわね」
「何か変なところで引っ込み試案だね」
「こうしたことはどうしてもなのよ」
こう裕貴に言うのだった、それで裕貴はそのことを書かないで妖怪のことだけを書いた。するとその記事の評判は上々だった。それで裕貴も彼と一緒に記事を書いた美和子もこれでよかったと思った。妖怪を見られたことも含めて。
雲外鏡 完
2019・7・30
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