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夏のある日
第四章

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「一つは自分が持っていて」
「もう一つはなの」
「自分の子供に渡すのよ」
「そうなってるの」
「そう、だからね」
 それでと言うのだった。
「私はこれからね」
「私から生まれて」
「貴女の娘になるから」
「そうなの、何か」
 少女にそう言われてだった、沙雪は。
 何かえも言われぬ不思議な気持ちになってだ、少女に言った。
「わからないけれど。貴女が私の娘になるから」
「それならなのね」
「宜しくね」
 こう少女に答えた。
「これからね」
「うん、貴女のことは生まれてからね」
 それからのこともだ、少女は沙雪に告げた。
「お母さんって呼ぶから」
「ええ、そう呼んでね」
 沙雪は笑顔で答えた。
「貴女が生まれたら」
「その時からね」
「そう、そしてね」
 そのうえでと言うのだった。
「一緒に暮らしていくから」
「そうね、親子になるから」
「宜しくね、お母さん」
「こちらこそね」
 沙雪は少女に笑顔で応えた、その後は少女とそのこれまで来たことのない場所で一緒に楽しく遊んだ。そうして。
 ふと目が覚めるとだ、庭に祖母がいるのが見えて布団から起き上がって言った。
「お祖母ちゃん、今何時?」
「ええと、何時だろうね」
「まだ日が高いけれど」
 見ればそんな空だった、青い空が実に奇麗で雲も真っ白だ。
「三時位かしら」
「そんな時間かね」
「あまり寝てなかったのね」
 沙雪はこれまでいた場所のことが夢だと思いつつ言った、あの少女と話したことも。
「そうだったのね」
「寝たのは十二時半位だったね」
「じゃあ二時間半位ね」
 寝た時間はとだ、沙雪は思った。
「寝てたのに、半日の気がしたけれど」
「そんなに寝てないよ」
「そうよね」
 笑って応える祖母に自分も笑って応えた。
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