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夏のある日
第三章

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「何といってもね」
「ゆっくりと休んで」
「そうしてね」
「健康な赤ちゃんを産むべきよね」
「そうだよ、いいことだよ」
「じゃあこれからも」
「赤ちゃんが生まれるまでね」
 お腹が大きくなってきている孫に言うのだった。
「休むんだよ」
「それじゃあ」
「これからもゆっくりするんだよ」
 祖母は孫娘に優しく言った、そしてこうも言った。
「じゃあ今はね」
「お昼だから」
「お昼寝するかい?」
「そうね」 
 沙雪は祖母の勧めに微笑んで応えた。
「それじゃあね」
「今日もね」
「寝かせてもらうわ」
「それじゃあね」
 祖母は自分が布団を敷いてくれた、これも身重で健康状態がまだ思わしくない孫娘を気遣ってのことだ。
 沙雪は祖母が敷いてくれた布団の中に彼女に礼を言ってから入った、そうしてそのうえで暖かい部屋の中で休むと。
 すぐに眠りに入った、すると。
 沙雪は不思議な場所にいた、草原でそこにはクローバーや菫の花が所々に咲いていた。
 近くには池がありそこには菖蒲や百合があって池には蓮もある。緑と青の中に様々な色の花達がある。来たことのない場所だった。
 その中に出るとだった、ふと。
 何処からか声が聞こえてきた、その声はこう言っていた。
「ねえ、いい?」
「何?」
「貴女どうしてるの?」
 声は沙雪にかけたものだった。
「ここで」
「いや、私は」 
 沙雪は声に対して答えた。
「今ここに来たばかりで」
「そうだったの」
「ここは何処なの?」
 沙雪は声に対して尋ねた。
「一体」
「ここは私の中よ」
「私の?」
「そう、私のね」
 この声と共にだった、沙雪の目の前に。
 小さな女の子が姿現した、その娘はよく見ると。
 沙雪の子供の時の姿だった、沙雪は自分自身を見て思わず言った。
「私?」
「うん、私は貴女みたいね」
 少女は沙雪に微笑んで答えた。
「やっぱり」
「どうして小さい時の私が」
「私ね、実はね」
 こう沙雪に言うのだった。
「二つの魂があって」
「そうだったの」
「一つは貴女で」
「もう一つは」
「今は貴女の中にあるの」
「私の中になの」
「そう、そしてこれからね」
 見ればふわりとした白い服を着ている、ワンピースのそれを。そのせいか何処か天使を思わせる姿だ。
「貴女から生まれるの」
「というと貴女は」
「そう、私は私を生んで」
 そしてというのだ。
「私のお母さんになるのよ」
「じゃあ貴女は」
「貴女の娘よ」
「まだ生まれていないのに」
「これから生まれるの」
 これが少女の返事だった。
「女の子は皆ね」
「皆って」
「魂を二つ持っていて」
 そしてというのだ。
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