第三章
[8]前話
「どうしてもだ」
「私は、ですか」
「ウィーンの宮殿はと思う」
「そうですか、ですが」
エリザベートは父王にこう答えた。
「私もまたあの方を見て」
「それでなのか」
「あの方を好きにならずにはです」
「いられないのか」
「そうならずにいられるでしょうか」
こう言うのだった。
「どうしても」
「ではか」
「あの方が皇帝でなければと思います」
この気持ちはあった、だがだった。
選択しもなかった、エリザベートは父に尋ね返した。
「既に我が家とハプスブルク家の婚姻は決まっていますね」
「そのこと自体はな」
「左様ですね」
「そうだ、確かにその相手はヘレーナだったが」
彼女の姉がだったというのだ。
「結局はだ」
「当家とですね」
「ハプスブルク家の婚姻は決まっている」
このこと自体はというのだ。
「そしてわかっているな」
「王家、そして貴族の婚姻はですね」
「家と家だ」
「そして国と国ですね」
「その結びつきを深めるものだ」
父は王としてこのことも話した。
「それは言うまでもないことだな」
「私も王家の娘です」
確かに自由に育った、だがそれでもだった。
このことは紛れもない事実でだ、父にも答えた。
「ですから」
「そうだな、ではな」
「今思ったのですが」
父の家と家の言葉を聞いてだ、エリザベートは話した。
「これは運命でしょうか」
「皇帝陛下とお会いしてか」
「求婚されたことは」
「そうか、ではその運命にか」
「私は従います」
こう言ってだ、エリザベートはハプスブルク家に嫁ぎオーストリア皇后となった。二人の生活は長く続いたが残念なことにエリザベートにとって幸せではなかったことは歴史にある通りだ、そしてその最期の時もだった。
エリザベートはあるテロリストに刺されこと切れる時に小さく呟いた。
「これが私の運命だったのです」
「運命ですか」
「そうです、陛下と出会いしてこうなることが」
こう言って微笑んで世を去った、その話を聞いた皇帝は嘆き悲しんだがこの世のあらゆる不孝が私を襲うと言ってからこうも言った。
「これが運命だったのだ」
「陛下の、ですか」
「そうだ、私と皇后のな」
二人はそれぞれの愛の終焉を感じ呟いた。思わぬ出会いにより結ばれそして思わぬ凶行により別れた。全ては運命だった、エリザベートもフランツ=ヨーゼフも思ったのだ。それが如何に美しくかつ残酷な運命であったとしても。
運命の出会い 完
2019・2・14
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