第二章
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「そなたがオーストリアに嫁ぐことになる」
「そうしてですか」
「そなたがオーストリア皇后になるのだ」
「あの家の、ですか」
「我が家も古いヴィッテルスバッハ家も古い」
この家は神聖ローマ皇帝も出したドイツでも名門中の名門の家だ、それこそドイツの覇権をそのオーストリアと争うプロイセンのホーエンツォレルン家はおろか皇帝の家であるハプスブルク家よりも古い。
「それに以前から婚姻を結んできている」
「なら問題ないですか」
「格式ではな、だがそなたがか」
父王は彼を見て話した。
「オーストリアに嫁ぐとなると」
「ですからそれは」
「だからまさかの話だ」
それはというのだった。
「それでも思うだけだ」
「そうですか」
「考えてみれば陛下はヘレーナと会っている間もずっとだ」
それこそというのだ。
「そなたを見ていたからな」
「若しもですか」
「あくまで若しもだがな」
どうなるかとだ、エリザベートに言うのだった。そうしてだった。
この日は休んだがその次の日だった、何とだった。
皇帝はエリザベート達が泊まっているホテルに自ら来た、そのうえで自らエリザベートに会って話した。
「私は貴女を妻にしたいです」
「なっ!?」
この事態には誰もが驚いた、皇帝の周りの者達だけでなくヴィッテルスバッハ家の者達だけでなくだった。
ハプスブルク家の者達も驚いた、特に皇帝の母であるゾフィー大公妃がだ。
その事態の仰天してだ、こう言った。
「この様なことは許されません」
「では、ですね」
「この度のことは」
「陛下には」
「はい、諦めて頂きます」
息子でもある彼にというのだ。
「そして決められた通りにです」
「その様にですね」
「ここはヘレーナ様とですね」
「あの方とですね」
「結婚して頂くのですね」
「そうです、陛下には私からも言いましょう」
こうしてだった、大公妃は自らも皇帝に言った。だが生真面目で規律を重んじしかも母を大事にする彼がこの時ばかりはだった。
母にそう言われてもだ、整っているがきつさが観られる顔立ちである母に対して毅然として言い返した。
「これは運命です」
「運命だからですか」
「はい」
それ故にというのだ。
「私はあの方とです」
「結婚するというのですか」
「そしてこの国に来てもらいます」
オーストリアにというのだ。
「皇后として」
「どうしてもですか」
「そうです、何があろうともです」
「エリザベート王女をですか」
「迎えます」
自分の妻にというのだ。
「何としても」
「絶対にですか」
「あの方がよいと言われれば」
こうしてだった、皇帝は何としてもと言った。そうして。
エリザべートの方もだ、父王に言われていた。
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