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運命の出会い
第一章

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               運命の出会い
 その話を聞いた時エリザベートは完全に他人事だった。
「そうですか、お姉様もですか」
「遂に結婚することになった」
 バイエルン王マクシミリアンは娘に答えた。
「それでだ」
「私も、ですか」
「その見合いの場に共にいてくれるか」
 王は細面で彫刻の様にいや女神と言っていいまでに整った娘の顔を見つつ話した。
「そなたも」
「お姉様の運命の時ですね」
 エリザベートはその整った顔で応えた。
「それで、ですな」
「その運命の時にそなたも立ち会ってだ」
 そうしてというのだ。
「そしてだ」
「これからのことについてですね」
「知るといい」
「それでは」
 エリザベートはその言葉に頷いた、そしてだった。
 姉が婚約者とはじめて会うその場所に共にいることにした、そうしてだった。
 そのうえでだ、その場所にいるとだった。そこには。
 軍服を着た眉目秀麗な青年がいた、その青年はというと。
 エリザベートを見た、それから彼女の姉へレーナではなくだった、
 あどけなく自然に振る舞うエリザベートばかり見ていた、それでだった。
 晩餐会の時に自らエリザベートのところに来て声をかけた。
「フロイライン、よければ私とです」
「これからですか」
「はい、ダンスを踊ってくれませんか」
 こうエリザベートに言うのだった。
「そうしてくれますか」
「皇帝陛下がですか」
「はい」
 まさにと言うのだった。
「宜しいでしょうか」
「私でよければ」
「はい、それでは」
 こうしてだった、エリザベートはその青年即ちオーストリア皇帝フランツ=ヨーゼフとダンスを踊った。それも一度ではなく。
 何度もだった、この事態に父王も姉のヘレーナも驚いて言った。
「まさかと思うが」
「ええ、まさかね」
「皇帝陛下はな」
「私ではなくシシィをお気に召されたのかしら」
「だとしたらな」
「これは意外ね」
「まさか」
 そして当のエリザベートもだ、それはないと思ってだった。 
 それでだ、父と姉に言った。
「そんなことはないです、皇帝陛下はただです」
「そなたとか」
「ダンスを踊りたかっただけで」
 それでというのだ。
「特にです」
「そなたに思うことはないか」
「そうではないでしょうか」
「それならいいがな、しかしだ」
 父である王はどうかという顔になってエリザベートに話した。
「若し陛下がそなたを気に入ったならな」
「そうならですか」
「流石にそれはないと思うが」
 それでもと言うのだった。
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