第七章
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「我々がな」
「ではこれからもですね」
「慎重に戦っていきましょう」
「無謀な行いなぞせずに」
「迂闊な進軍も禁物ですね」
「辛く厳しい戦いになることは間違いない」
このことはというのだ。
「だからいいな」
「はい、敵は強い」
「肝に銘じて置きます」
部下達もこう応えた、クルックは実際にこの戦争では慎重に慎重を期してそのうえで戦っていった。だが。
カスターは違った、功に逸る彼は部下達に言っていた。
「進め、そしてだ」
「スー族の連中を一人でも多く殺せ」
「そうしていくことですね」
「これからも」
「そうだ、止まるな」
決してというのだ。
「我々は敵より優れた武器があるのだからな」
「それじゃあですね」
「このまま進軍を続けていきますね」
「そうしていきますね」
「そうだ、止まることなくだ」
こう言ってだった、彼は率いる部隊に進軍を続けさせたが。
スー族とシャイアン族の大軍との戦闘に入りそうして全滅した、クルックはその報告を聞いて静かに述べた。
「やはりな」
「慎重にいかねば」
「やられるのはこちらですね」
「インディアンではなく」
「我々ということですね」
「そうだ、先日の戦闘とカスター中佐のことはだ」
彼等のことはというのだ。
「肝に銘じてだ」
「戦っていくことですね」
「我々の進軍も止められましたし」
「勝ったと言えますが」
「それでも」
「そうだ、しかし先日の女だが」
クルックは彼女の名前も出自も知らない、だがそれでも言うのだった。
「見事だった、まるでバッファローの様だった」
「猛牛の様でしたね」
「あの突進たるや」
「まことに」
「そうだった、だからだ」
その勇ましさからというのだ。
「バッファロー=カーフ=ロード=ウーマンとな」
「これからはそう呼びますか」
「あの女がまた我々の前に出たら」
「その時はですね」
「そう呼ぶとするか」
こうも言うのだった。
スー族のこの女の本名は言うまでもなくスー族の名前だった、だがアメリカでは以後この名で呼ばれることになった。
バッファロー=カーフ=ロード=ウーマンの名前はアメリカとインディアンの長く残虐な戦いの中に残っている、インディアンは勇敢な者が多かったが女にもそうした者がいた、このことは今も歴史に残っていることである。
バッファロー=カーフ=ロード=ウーマン 完
2019・2・17
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