第二章
[8]前話 [2]次話
「だから敵が来たらだ」
「その時は戦って」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「勝って帰って来る」
「必ずなのね」
「そうだ、必ずだ」
カムズの妹への返事は強いものだった、これいじょうはないまでに。
「俺は帰って来る」
「そう、それじゃあ」
「それじゃあか」
「私も戦うわ」
妹は兄に毅然として言った。
「ここは」
「いや、それは駄目だ」
カムズは自分もという兄にすぐにこう返した。
「女は戦うな」
「それがスー族の決まりだから」
「そうだ、戦うのは男だ」
あくまでというのだ。
「だからだ」
「それは私も知っているけれど」
「知っているなら言わないことだ」
最初からというのだ。
「待っていることだ」
「この村で」
「そうだ、俺達男が戦ってだ」
そうしてというのだ。
「勝って帰ってくるのをだ」
「そうしていていいのね」
「俺は必ず帰って来ると言ったが」
カムズは自分のこの言葉についても話した。
「俺達は嘘を吐かないな」
「ええ、どの部族も」
即ちインディアンはとだ、妹も述べた。
「嘘は吐かないわ」
「誇り故にだ、しかしだ」
「白人は違うわね」
「白人と一緒にいる連中もだ」
彼等にとっては黒人も黄色人も同じだった、外の国から来た者達は彼等にとっては誰もが敵であったのだ。
「嘘を吐く」
「そうね、本当にいつも嘘ばかりね」
「嘘を吐くのは奴等の仕事だ」
カムズはこうも言った。
「俺達の仕事じゃない」
「だからなのね」
「俺は必ず帰ってくる」
またこう言うのだった。
「何があってもな」
「では私は」
「待っていろ」
こう言うのだった。
「いいな」
「わかったわ、じゃあ」
「約束は絶対だ」
それこそと言うのだった。
「俺達はそうだな」
「白人達と違って」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「ここにいることだ」
「その約束は」
「しないか」
「私もスー族だから」
これが妹の返事だった。
「約束は絶対に破らないから」
「だからだ、だが」
「戦いには」
「そうだ、絶対に加わるな」
「それ以外ならいいのね」
「とにかく戦争には連れて行かない」
即ち戦いに加わるなというのだ、カムズは軍勢に連れて行かず戦場に送らなければ妹は戦わないと思っていた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ