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ほんわかホリデー
第五章

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 その赤の中でだ、千花は神楽に話した。
「明日ね」
「はい、明日ですね」
「そう、明日ね」
「部活で、ですね」
「会おうね」
「お願いします」
「そうしようね」
「それとですが」
 神楽は千花にさらに言った、橋の向こうに去ろうとしている彼女に。千花の家はそちら側にあるからだ。
「最後に一つお願いがありますが」
「何?」
「はい、手を握っていいですか?」
「手を?」
「はい、そうしていいですか」
「どうしてなの?」
 何故手を握りたいのかをだ、千花は神楽に尋ねた。尋ねる表情もおっとりとして穏やかなものだ。
「それは」
「そうしたいと思いまして」
「理由はないの」
「これといって。ただ」
「私の手をなのね」
「握りたいと思いまして。その暖かさを」
 ここで神楽は何故自分がそうしたいのかをわかった、自然と言葉に出たそのことから。
「ですから」
「そうなのね、それじゃあ」
「いいですか?」
「いいよ」
 千花は神楽に笑顔で答えた、その返事を受けてだった。
 神楽は自分の両手を出してそうして千花の両手を握った。握ったその手はとても暖かくそれでだった。
 神楽はその暖かい手の持ち主に微笑んで言った。
「私も部長みたいに暖かい手になります」
「私みたいに?」
「はい、なります」
 自分と千花に約束した、そうした言葉だった。
「絶対に」
「そう思うからなのね」
「握らせてもらいました、では」
「また明日ね」
「宜しくお願いします」
 神楽は千花から手を離した、そして笑顔で手を振り合って別れた。そのうえで自分の家に帰ったが家に帰るまでも帰ってからもだった。
 千花の暖かさを忘れていなかった、そして彼女の様な優しく癒される暖かさを身に着けようと思った。そしてやがて彼女も暖かい手の持ち主と言われる様になった。千花とはタイプが違うが優しくそうした手の持ち主だと。


ほんわかホリデー   完


                  2019・5・15
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