第四話 夢と日常の狭間
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じゃない」
「冷たいのぉ……アグニでヒートなのに、氷属性かよ」
少年は矢摩 天冶。ドヴェルグを志す『魔鉄加工科』に所属している生徒だ。羽矢や隆太と同じ、中等部からの友人だ。
「寮の一階に自販機がある。そこでコーヒー緑茶微糖でも買ってろ」
「おこづかいちょーだい」
「拳骨ならくれてやるぞ」
「バイオレンスゥ……」
「それで用件はなんだ?」
「暇潰し」
「帰れ」
ワークを投擲した氷絃だったが、それはパシッと天馬にキャッチされてパラパラと捲り始めた。
「……見事に漢字と慣用句以外まっさらだな」
「冴空がどうした?」
「ピンポイントに反応するな。真っ白って意味だわ、課題は終わらせなきゃだめだぞぉ?」
「いまやっていた所だ」
「知ってる。てかさ苦手だったら答え貰ってるんだから写すなり、バッテン付けて処理しちまえば?」
「そんなズルをしたらいつまで経っても成長できない」
「真面目だなぁ」
「それに、冴空がちゃんとやってるんだ。俺だけが楽するのはダメだろ?」
「なんでもかんでも珠充に関連付けるお前の頭はどうなってんだよ」
やれやれと呆れた声色で言った天治はワークを氷絃に投げ返して本棚の方へと視線を移す。そこには漫画や美容院にあるようなヘアカタログがズラリと並んでいる。
「珍しいな、氷絃がちゃんと本を整理してるなんて。前の部屋なんてそこら辺に散乱してたよな?」
「初日に冴空がやってくれたんだよ」
「なるほどな、珠充が整頓した本をお前がぶちまける事なんてねぇわけだ」
「まだ移動してから時間が経っていないのもあるがな」
天治は話題が終わるとまた適当な話題を出して雑談を続ける。氷絃は一応聞いて適当に返事はするものの意識は基本的に目の前の課題に行っている。先程とは違って寝そうな雰囲気は一切無い。
「って、そうだそうだ。氷絃よ、ちょっと最近きな臭い話を耳にしたんだがよぉ」
「きな臭いのきなってなんだ?」
「きな粉だろ。じゃなくて真面目な話だ。未契約魔女が最近この京都限定で失踪してるって話」
「つまり冴空に関係があるな。続けてくれ」
「おう一気に眼がガチになったな。つっても俺が知ってるのは未契約魔女が三月から半月に一人のペースでOICCを残して失踪してるって話だけだ」
OICCはその名の通りOI能力者及び魔女体質者に着用が義務付けられた身分を証明するモノだ。着脱はある程度簡単にできるものの基本的には着けていなければならない、外出中に外すようなことはあまり無いモノだ。
「それだけか?」
「おう。つまり、これからもちゃんと珠充を送迎してやれよ。それかさっさと契約しちまえ。そうすりゃ心配はゼロだぜ?」
「そうか。ありがとな」
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