第四話 夢と日常の狭間
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のが分かる。
──ああ、そうだよな。赦せないよな。守りたいよな。どうしようもない、行き場の無い感情をぶつけたいよな。
栄養失調寸前だったはずの『俺』は獣のように走り、男たちに立ち向かう。殴ろうとする拳を、蹴ろうとする足を、捕まえようとする腕を、全てギリギリで避け、ナイフで斬りつけ、削ぐ、削ぐ──殺ごうとする。
──いつの間にか、いままでその光景を見下ろしていた神様気分の俺は『俺』の景色を見ていた。
観測する。燃え盛る焔と────いない。ずっと俺の視界にいたアイツがいない。と、驚いたのも束の間、焔の騎士鎧に身を包んだアイツが駆け抜ける。
──これも知らない。アイツが何か行動を起こすなんて、有り得ない。いつも俺の視界にいるだけの存在だったはずなのに。
俺の意思に関係なく『俺』はその後を追う。アイツが携えた剣で男の脹ら脛を斬る──当然、斬れるなんてことはない。しかし、『俺』がその動きを完璧に模倣して全く同じ動きで脹ら脛を斬る。技量はともかくどこにそんな力があったのか、いとも容易く『俺』は男を斬りつけていた。
だが、そんなムソウも長くは続かない。アイツが掻き消えて『俺』は捕まってしまった。
殴られる、殴られる。鈍い音が間近で響き『俺』は耐えきれずに苦痛の声を吐き出す。男達の怒声、殴打の音、自身の声──なによりも小さく、しかしなによりも耳に、脳に、『俺』に響く泣き声が泣き声が耳に届いた。
もうやめてくださいと、俺を殴らな いでくださいと、俺が死んじゃうと、どんな雑音よりもか細い冴空の泣く声が『俺』をまた突き動かした。
弾かれる。視点が戻り、俺はまた何物にも邪魔されていないその景色を眺める。冴空の声を聞いた『俺』の眼は──哀しみと怒りに満ちていた。
咆哮、そして殴ってきた男の手を『俺』は掴む。非力なはずの子供の手はいつの間にか、見慣れた、焔のような印象を受ける紅蓮の騎士鎧のソレとなっていた。
周囲にあったモノが蠢き『俺』の身体に纏わりつく。
数秒も経てば『俺』の身体は見慣れたアイツのモノになり、全身に紅蓮の騎士鎧を装着していた。周囲にあった魔鉄をイメージ力で自分の『理想』の姿に変えたのだろう。
──馬鹿馬鹿しい、そんな事ができる訳がない。馬鹿馬鹿しい、俺の『歪む世界』はそんな大層なモノなんかじゃない。馬鹿馬鹿しい、俺のイメージ力なんてたかが知れている。
ああこれは夢だ、過去の記憶の再生かと思っていたがただの瞞しだ。力の無かった俺が見せた──あの時になりたかったモノだ。あの過去を変えたいと、冴空の涙を見たくなかったと、そう俺は心の底でずっと願ってきたのだろう。それがきっと、夢になり俺に見せているんだ。
そ
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