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ある晴れた日に
584部分:誰も寝てはならぬその二
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誰も寝てはならぬその二

「いつもちゃんとね」
「お母さんみたいにね」
「さもないと笑われるわよ」
 だからだというのだった。
「そのかわりちゃんとしてるとね」
「奇麗に思われるっていうのね」
「その通りよ」
 まさにその通りだというのだった。
「わかったわね」
「ええ、いつも言われてるしね」
 だから余計に納得する奈々瀬だった。
「とにかくちゃんとしないとなの」
「身だしなみはきちんと」
 こうも言ってみせる母だった。
「ただでさえあんたはね」
「私は?」
「私にそっくりなんだし」
 このことも娘に言うのだった。
「お父さんの子供っていうのはわからなくてもお母さんの子供っていうのはわかるから安心しなさい。それはいいわね」
「よくないわよ」
 しかし今の彼女の言葉には少しむっとした顔で返した奈々瀬だった。
「だって。お父さんの子供じゃないかもって何なのよ」
「そう言っただけよ」
 母はあっさりと返したのだった。
「ただね」
「それだけ?」
「そうよ、これだけよ」
 やはりあっさりとした言葉だった。
「これだけ。別に何ともないから」
「私のお父さんが違うとかじゃないのね」
「ないわよ」
 それはないというのだった。
「わかったわね」
「凄く気になるけれど」
「あんたのお父さんは私の旦那様よ」
 今度の言葉はこれまでになく強気の言葉だった。
「それは安心しなさい、何があってもね」
「何があってもなのね」
「どうしてもっていうのならDNA検査しなさい」
 こうまで言うのだった。やはり自信に満ちているのだった。
「わかったわね」
「ええ。じゃあわかったわ」
「それでもあんたは私の娘だから」
「それは本当にこれでもかっていう位わかるわよ」
 自分の顔をよく知っているからこそ言える言葉だった。とにかく彼女の顔は母親のその顔をコピーしたものであった。クローンと言っても差し支えのないレベルであった。
「それだけはね」
「それはもう疑えないのね」
「どうやって疑えっていうのよ」
 とにかくそれは、だった。
「何もかもがそっくりなのに」
「けれど性格はあまり似なかったわね」
 だが母の言葉が不意に変わった。
「残念だけれど」
「性格は、なの」
「あんた気が弱いからね」
 このことを娘に告げて少し寂しげな顔になる母だった。言いながらその手に持っているミルクを一口飲む。そうしてからの言葉であった。
「子供の頃から」
「それはまあ」
 それを言われると弱くなった奈々瀬だった。顔が自然に俯き気味になる。
「やっぱり」
「昔からね。よくいじめられてたし」
「ええ」
「未晴ちゃん達がいなかったらあんたずっといじめられてたかも知れないわね」
「それはね」
 
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