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戦国異伝供書
第五十話 再び向かい合いその六

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「美濃は東も堅城が多い」
「信濃から入るにしてもです」
 ここで言ったのは山本だった。
「どうにも」
「斎藤道三殿もわかっておるのう」
「既に。ですから」
「信濃から攻め入ってもな」
「美濃の東を攻めるにしても」
「苦労するな」
「はい、そして多くの堅城を攻め落とし」
 美濃の東のだ。
「美濃の真ん中に入っても」
「そこからがじゃな」
「一番の問題があります」
「稲葉山城じゃな」
「あの城は東海と甲信一の城です」
 この二つの地域の中でというのだ。
「川に囲まれた山にです」
「城を築いておってな」
「恐ろしい堅城になっております」
「だからじゃな」
「あの城を攻め落とすことは」
 それはというのだ。
「どうにも」
「そうじゃな、だからな」
「美濃攻めはです」
「長尾家との戦以上にな」
「焦ることはないかと」
「そうじゃな」
「あの城ですが」
 幸隆も言ってきた。
「我等でもです」
「攻め落とすにはか」
「難しいです」
「真田の忍達でもじゃな」
「あまりにも堅固なので」
 山本が言う通りにというのだ。
「ですから」
「左様じゃな」
「ですから」
「美濃攻め自体もか」
「焦ってはならぬかと」
「ではじゃな」
「甲斐と信濃をじっくりと治め兵を養い」
 そしてというのだ。
「具足もよいものを揃え」
「力を備えてじゃな」
「万全の力で」
 そこまで整えてというのだ。
「美濃を攻めてもです」
「遅くはないな」
「そうかと。稲葉山城は他の家もです」
「攻め落とせぬな」
「近江の浅井家や六角家にも」
「では尾張はどうじゃ」
 晴信は言葉を続けた。
「織田家は」
「あの家ですか」
「あの城を攻め落とせるか」
「難しいかと」
 幸隆はすぐに答えた。
「流石に」
「そう思うな」
「それがしは」
「わしもそう思うが織田家は人が多い」
 優れた人材が揃っているというのだ。
「だから若しやな」
「あの城を攻め落とし」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「美濃自体もな」
「攻め落とすことも」
「考えられるが」
「流石にそれは」
「そうそうな」
 そこはというのだ。
「ないであろうな」
「やはり」
「うむ、まあ殆どな」
「織田家もまた」
「あの城はおいそれとは攻め落とせぬであろうが」
 若しやとだ、また言う晴信だった。
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