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戦国異伝供書
第五十話 再び向かい合いその五

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「上杉殿いえ長尾殿は」
「今は見ていよ」 
「わかり申した」
「勝手に攻めた者は切る」
 こうまで言うのだった。
「誰であろうとな」
「そうするからですな」
「ここは決して動くでないぞ」
「さすれば」
 馬場も頷き他の者達もだった、あくまで動かず。
 そうして上杉軍の動きを伺いつつ彼等が去るのも待った、そして遂にその時が来た。
 政虎は状況を見て全軍に告げた。
「ではです」
「この度もですな」
「これで、ですな」
「下がりますな」
「この川中島から」
「そうします、やはりこの度もです」  
 いささか残念な顔で言うのだった。
「武田軍は隙を見せませんでした」
「だからですな」
「ここは、ですな」
「今は退き」
「そして越後に戻る」
「そうしますな」
「はい」 
 その通りと言うのだった。
「これ以上睨み合っても仕方なく」
「しかもですな」
「ここで、ですな」
「この度は、ですな」
「越後に戻り」
「また機を待ちますか」
「そうします、この度も残念でしたが」
 武田軍を決着をつけられなかったからだ、むしろ晴信よりも政虎の方が決着をつけられなかったことを残念に思っている。
「しかし」
「それでもですね」
「また機会を見て」
「信濃に攻め入り」
「武田軍とですか」
「雌雄を決する時を待ちます」
 こう言ってそしてだった。
 政虎は兵を退かせた、その動きも速く晴信を以てしても攻めることは出来なかった。隙があまりにもなくだ。
 それでだ、彼は上杉の軍勢が見えなくなってから言った。
「ではな」
「我等もですな」
「兵を退かせて」
「そうしてですな」
「お館様もですな」
「甲斐に戻る」
 そうするというのだ。
「そしてな」
「政ですな」
「それに励まれますな」
「再び」
「そうされますな」
「あらためてな、しかし」
 ここで晴信はこうも言った。
「政は順調であるが」
「はい。この様にです」
 穴山が言ってきた、晴信の姉婿である彼がだ。
「度々攻められると」
「その度に兵を出してな」
「それだけで銭や兵糧を多く失いますし」
「時もな」
 それもというのだ。
「費やす、美濃に攻め入りたいが」
 晴信はそう思っていてもというのだ。
「中々上手くいかぬのう」
「左様ですな」
「それがどうかと思うがしかし」
「しかしとは」
「美濃に攻め入ってもな」
 晴信の望み通りそれが出来てもというのだ。
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