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戦国異伝供書
第五十話 再び向かい合いその四

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「そうすればよい」
「それが、ですな」
「わしの今の狙いじゃ」
 飯富にもこう答えた。
「それはな」
「そしてですな」
「そうじゃ、敵が去るとな」
 そしてというのだ。
「それでよい、それを見届けてな」
「我等もですな」
「そうじゃ」 
 まさにと言うのだった。
「去るのじゃ」
「そしてその時は」
 今度は山縣が言ってきた。
「攻めることは」
「そうしたいが長尾殿じゃ」
 ここで晴信は政虎を今の姓で呼ばなかった、あくまで長尾だ。守護である彼にしてみれば守護代である彼が自分よりも格上の関東管領になったことを受け入れられていないのだ。
「だからじゃ」
「退く時でもですか」
「前の時を覚えていよう」
 先の川中島のというのだ。
「お主も」
「はい、あの時は」 
「隙がなかったな」
「驚くまでに」
「だからじゃ」
 この度もというのだ。
「おそらくじゃが」
「隙がないので」
「攻められぬ」
 退く時もというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「行かせることになる」
 無傷で、というのだ。
「あちらにすれば戻る」
「越後まで」
「そうなるわ」
「左様ですか」
「そしてそうなってもな」
「仕方ありませぬか」
「長尾殿はまさに天下の傑物じゃ」
 それ故にというのだ。
「退く時もな」
「攻められず」
「行かせるしかないわ」
「そうなりますか」
「わしも出来ればな」
 晴信は本音も述べた。
「この度でな」
「決着を、ですな」
「つけたい」
「そう思われますな」
「そしてあの者を」
 政虎、彼をというのだ。
「是非な」
「家臣にですか」
「迎えたい」
 殺さずというのだ。
「出来るならな」
「左様ですな」
「しかし無理をすればな」
「敗れるのはこちらですな」
「そうじゃ、焦ってはならん」
 このことも戒めているのだった、自身で。
「そして無理をせずな」
「機を待つのですな」
「そうじゃ」
 その通りだというのだ。
「今はな」
「殿、ではです」
 馬場が聞いてきた。
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