二十六 親睦
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を走り去っていった。
「猫か…」
仮面の下で、ぽつり呟く。
しかしながら隙のないその身のこなしから、『根』に所属する者が常に神経を張り巡らせているのが窺えた。
鳥の鳴き声がちちち…と聞こえてくる麗らかな陽射しが窓の外では溢れている。
里が明るい光に包まれている反面、薄暗い室内でサイと会話を交わす仮面をつけた『根』はまさしく闇に生きる者だった。
平和な木ノ葉の里の裏に所属する者のひとりは、再度サイに忠告をもたらす。
「里の先を見据えたダンゾウ様の意志を担うもの────それが今回の極秘任務だ」
そう告げた先輩の眼が仮面の奥で細められる。
サイの手元にある本に眼を留めた彼は「まだそんなものにしがみついているのか」と咎める。
「お前の兄──シンは死んだ。それ以上でもそれ以下でもない」
いっそ残酷なまでの言葉に、サイは顔を逸らす。
言い淀み、顔を伏せたサイに、『根』の先輩は改めて『根』に生きる者が今まで幾度も言い聞かされてきた決まり文句を口にした。
「『根』には名前がない。感情はない」
「過去はない。未来はない。あるのは任務」
続けて言葉を連ねたサイに、『根』の先輩は満足げに頷く。
「木ノ葉という大木を眼に見えぬ地の中より支える我々『根』の意志。決して忘れるな」
そう言うや否や消え去った、同じ『根』に所属する先輩の忠告がサイの耳朶を打つ。
白煙と化した相手が消えた場所を睨むように見据えながら、サイは「……あなた方はなにもわかってない…」と小さく反論した。
「シン兄さんは生きている…『根』のあの水柱の中で」
だから僕は────…。
薄暗い部屋。
絵に囲まれた室内で、ぽつりと呟いたサイの本音を聞いているのは、先ほど『根』の先輩が投擲したクナイに驚いて逃げたはずの猫だけだった。
サイが住む部屋を遠目から見ている猫。
サイの先輩である『根』の人間にクナイを投げつけられ、逃げたふりをした猫は、髭を震わせて口を開く。
そこからあふれ出す鳴き声は猫のものではなく、明らかに人の声。
「『根』には名前がない。感情はない。過去はない。未来はない。あるのは任務、か────。くだらない。全くもってくだらない洗脳だ」
『根』しか知らぬ文句をあっさり諳んじてみせた猫の影がみるみるうちに人の形へ変わってゆく。
サイの部屋の前にある木々に飛び込んできたクナイを、手の中でもてあそぶように放り投げながら、彼は猫の変化を解いた。
サイが持っていた絵本の表紙。その絵表紙の人物に似ている彼は、サイがいる部
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