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ある晴れた日に
580部分:鬼め悪魔めその十六

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鬼め悪魔めその十六

「だからだよ。紅茶は紅茶、コーヒーはコーヒーなんだよ」
「わかりにくい例えね」
「そうね」
 これが二人の返答だった。
「どうにもこうにも」
「何かね」
「わかりにくかったらいいさ」
 坪本もこう開き直ってきた。
「とにかく譲れることと譲れないことがあるのよ」
「それじゃあ言うわ」
 恵美はここまで聞いて彼に告げた。
「その譲れないことはね」
「ああ」
「絶対に譲ったら駄目よ」
 言葉は穏やかな真面目さを含んだものになっていた。
「絶対にね。いいわね」
「譲るなってことか」
「何があってもね」
 こう彼に告げるのだった。
「わかったわね、それは」
「ああ、わかった」
 彼もまた真剣な顔で恵美の言葉に頷いた。
「それはな。例えばこいつだってな」
「私なのね」
「ああ、そうだ」
 微笑んで加住に顔を向けてきていた。彼女もそれに返している。
「御前も絶対に譲らないからな」
「有り難う」
 彼のその言葉を聞いて微笑んだ加住だった。
「その言葉忘れないからね」
「ああ、頼むな」
「何だ、いいところあるじゃない」
 明日夢はそんな彼の言葉を聞いて述べた。
「案外」
「案外かよ」
「人間どこかいいところがあるのものなのね」
 こんなことも言う明日夢だった。
「いや、感心したわ」
「御前今まで俺をどういう目で見ていただよ」
「そのままだけれど」
 容赦のない明日夢だった。
「それがどうかしたの?」
「ちっ、俺は何なんだよ」
 思わず言ってしまった彼だった。
「何かよ。散々だな」
「変なこと言うからよ」
 ここでも素っ気無くきついことを言う明日夢だった。
「そんなことをね」
「ふん、御前そればっかりだな」
「言うわよ。まあそれでもね」
「今度は何だ?」
「その娘よ」
 明日夢は今も彼の隣にいる加住を指し示していた。
「その娘、大事にしなさいよ」
「ああ、それはな」
 今度は真面目な顔で返した坪本だった。本当に真剣な面持ちである。
「わかってるさ。よくな」
「だったらいいけれどね」
「俺だってな。いい加減なだけじゃないんだ」
 真剣な言葉は続く。
「こいつはな。何があってもな」
「守るっていうのね」
「それだけじゃねえよ」
 これは彼の本音と意地が見える言葉だった。

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