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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
カートの挑戦
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ないだろう、『あの痛み』がカートをさいなんだ。
あまりの激痛に息が止まりそうになり、目眩に襲われる。
「カートの様子がおかしいぞ!」
「盾を構えない、まさか今の一撃で腕をやられたのか!?」
「早く治癒魔法を使え!」
魔法を使うには詠唱が、たとえ無詠唱が可能だとしても、発動するまでどうしてもわずかな集中の時間が必要となる。ほんの一呼吸ほどの短い時間であっても、戦闘においてその一呼吸という時間を作るのは難しい。
魔物は息つく間もあたえず攻撃を繰り出す。
カートはその猛攻から避けるのに精一杯であった。
動くたびに肩に激痛が走り、盾の重みが肩にのしかかる。負傷しなくても気力と体力が尽き、魔物の爪牙に捕まるのは時間の問題であった。
(死ねない、死ぬわけにはいけない!)
今ならまだ間に合う。棄権の意思を示せば控えている学院の魔法講師達が魔獣を無力化してくれるだろう。
(だがそれ以上に負けるわけにはいかない!)
おのれの弱さに負け魔人となり、一度は命を落とした。もうこれ以上弱さに屈するわけにはいかないのだ。
他の誰でもない、カートはおのれ自身におのれの強さを示す必要があった。
「はっ!」
いよいよ壁際に追い詰められるカート。
逃げ場はない。
だがその胸中に一縷の望みが生じた。
(壁を背にすれば虎の突進を逆に利用して剣を突き刺せる!)
魔物の体が躍動し、カート目掛けて突進を――しなかった。弧を描いて跳び込む。
これではたとえ頭を突き刺してもカート自身も魔物の下敷きになり、よくて相討ちである。
SYAAAッ!
「くっ!」
横に避けたカートが背にしていた壁に魔獣の頭があたり、陥没する。
(なん、だと!? やつの体は鉄か! いや、それよりも今の跳躍。あの虎は牙や爪で攻撃すれば壁に当たり遮られるからと飛び込んでの体当たりをしてきた。それも前肢を伸ばして! あれでは剣が頭部を貫くより前に前肢が俺にあたる。前肢をかわして剣を突き立てても虎の体が俺を押し潰す。人が知恵を絞り策を巡らせて考える戦術を、この虎は獣の本能で一瞬で導き出した……。こ、これが魔物! まさに魔獣!!)
動物は人などよりも遥かに強い。
チンパンジーの体長は一メートルに満たないと小柄だが、その握力は三〇〇キロもある。人がリンゴを握り潰すことができるには七〇キロ以上の握力が必要だ。
狼は時速三〇キロ前後の速度ならば一晩中でも獲物を追って走ることができるため、その移動範囲は恐ろしく広い。
極真空手の創始者である大山倍達は「人は日本刀を持ってはじめて猫と対等に闘える」と言っている。
ただの動物でさえ訓練を受けた人間と同等か、それを遥かに凌駕する体力、持久力、瞬発力、反射神
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