川尻早人は、青いバラと出会う(三人称)
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
川尻早人は、天邪鬼で、疑り深い。
理由は、自分が両親から愛されて生まれたのかという疑問からだった。
川尻家の夫婦は、悪く言えば冷めていた。
11歳の早人から見ても、それは明らかであり、母・しのぶは、わざと家事を怠って見せたり、それに怒らない父・浩作も浩作だ。
だからこそ、彼は、両親の愛を求めたのかも知れない。だからこそ知りたいと思ったのかも知れない。
11歳という幼さからは想像も出来ない技術力をもってしって家の中に監視カメラを仕掛け、父と母の様子を観察すること。それがいつしか日課になっていた。
そうやって二人の様子を見て、自分が愛の末に生まれたのかという疑問を解こうとしていた。
しかし、ある日を境に、父・浩作の様子がおかしくなった。
まず手料理をしたこと。
次に、異様に爪切りをすること。
ノートに何度も何度も自分の名を練習するように書いていること。
それまで夫に冷たかった母がそんな父の奇行に、妙に熱っぽくなったこと。
家の中に土が入った植木鉢を運んでいたこと。
この間など、父は、家中に響くような大声を上げてうなされていたらしい。なぜかその日、朝起きると、右手の爪から出血していたそうだ。(おまけに寝坊。急いで出勤する姿が見られた)
学校が休みだったため、早人は、両親の寝室に入った。
何もなく怪我をしたなら、何か凶器になるようなものがあったはずだろうという思い立ちだった。
ベットの傍の床には、血が転々とあった。父の爪から垂れたものだろう。
見たところ、凶器になりそうなモノはどこにもなかった。
すると、ベットにかけられている毛布の端がモゾモゾと動いた。
何かがいる? っと思いつつ、母が可愛がっている野良猫かも知れないとも思いつつそこを剥いだ。
そこにあったのは、鮮血色の根っこだった。
シュルシュルと蠢いていて、早人は思わず悲鳴を上げかけた。
鮮血色の根っこは、やがて、早人の姿を確認したように動きを止め、フッとベットの下から消えた。まるで最初から無かったように。
早人は、ハッとしてベットの下を確認した。だがそこにはもう根っこは無かった。
気のせいだったのかという考えが過ぎったとき、コンコンっと、部屋の窓が外から叩かれる音がした。見ると、窓の外にあの根っこがいた。そして窓を叩いていた。
早人が見たのを確認したのか、根っこは、フリフリとこっちだと言わんばかりに根っこの先端を振って下へと移動した。
慌てて、窓を開けると、根っこが壁を伝いながら、地面に移動していくのが見え、やがて玄関の扉前から、外の道へと移
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ