暁 〜小説投稿サイト〜
レーヴァティン
第百十四話 長田にてその二
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「是非な、ここから長田に行ってだ」
「ご正室の方に相応しいかどうか」
「噂の方が」
「そのことを見られますね」
「須磨ではないがな」
 ここもまた神戸となる、源氏物語で源氏の君が一度流された場所だが当時はこの須磨が本朝の領域の果てに思われていたのだ。
「長田だ」
「須磨は確か」
「源氏物語でしたね」
「我々もあの物語は知っていますが」
「あのお話ですね」
「そうでしたね」
「この世界にもあるが」
 源氏物語、世界最古の長編小説と言われるこの作品はだ。
「しかしな」
「須磨ではなく」
「この度は、ですね」
「長田ですね」
「そちらに赴かれますね」
「そこは違う、俺は須磨は好きだが」 
 この場所自体はというのだ。
「しかしな」
「今は、ですね」
「その須磨ではなく」
「長田に行かれ」
「そしてですね」
「娘を見よう」
 その自分の正室に相応しい彼女にというのだ、こう話してだった。
 英雄は供の者達と共に港を出た、そうしてから長田に向かうがその時に英雄は供の者達にこんなことも言った。
「神戸も賑わっていて何よりだ」
「はい、全くです」
「大坂や都にも負けていません」
「見事な賑わいです」
「人が多く行き交い多くの店が繁盛しています」
「質のいいものが多く出回っています」
「こうした風でないとな」
 街はというのだ。
「やはり駄目だ」
「左様ですね」
「町は賑わっているに限ります」
「寂れているよりも」
「その方がずっとよいです」
「そうだ、これからも街を賑わせる」
 その様なというのだ。
「政をしていこう、だが」
「だが?」
「だがといいますと」
「街が賑わうとな」
 ここでだった、英雄は前を見てその目を鋭くさせた。するとそこに柄の悪い身なりの者達がいた。その者達はというと。
「ヤクザ者も出て来るな」
「はい、どうしても」
「ああした連中は出てきますね」
「賑わえばそれはそれで」
「出ますね」
「街や村が穏やかになる」
 まずはここから言う英雄だった。
「すると人の暮らしに余裕が出来る」
「するとその余裕をですね」
「上前をはねる形でああした連中が出て来る」
「そういうことですね」
「ヤクザ者が」
「それも常ですね」
「表が賑わうと裏もだ」
 そちらの世界もというのだ。
「賑わう、そしてだ」
「ヤクザ者も栄えますね」
「裏の連中も」
「そうなりますね」
「ならず者は戦の世では盗人になる」
 追い剥ぎや山賊、野武士と言われる連中にだ。
「そして平和になるとな」
「ヤクザ者になる」
「そうなるのですね」
「質の悪い輩は何処でも質が悪い」
「そうでもありますか」
「ならず者はならず者だ」
 何処でもというのだ、もっと言
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ