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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode5『仲直り・前編』
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、やがて決心したように小さく頷く。
 一つ深呼吸して顔を上げたシンの顔には、わずかな恐れの表情が浮かんでいた。

「……僕の用事としては、君と仲直りをしに来た。それだけだよ」

「……それなら、もういいってさっき」

「違うんだ」

 ヒナミの言葉を遮って否定するシンに、訳が分からなくなって困惑する。仲直りがしたいというのならさっきのやり取りで全てが終わりだ、これ以上続ける話など何もない。ヒナミには、シンが何が言いたいのかわからなかった。

「……違う、って?」

「ごめんよ、僕の信条……じゃないか。考え方の問題でさ。これを話しておかなきゃ、君と本当に和解できると思えなかった」

 随分ともったいぶった素振りに、ますますヒナミが怪訝そうに眉を顰める。シン自身も回りくどく話すのは本意ではないのか気まずそうに顔を歪めて、しかし少しずつでも言葉を止めはしない。
 出来るなら話したくはなかった。それはきっと、彼女は知らない方が幸せだろうから。

 だがシンがああして口を滑らせてしまった以上、もう戻れない。きっとこれを話さなければ、彼女はこの場所にいても安寧を得られなくなってしまう。本当にバカだと、過去の自分を心の中で罵倒した。

 隠したかった事実とは何か?決まっている。





「……僕が、君の本当の名前を知っていた理由の事だよ。ヒナミ」

「……!」




 ――ただただ、彼女が心から安心して暮らせるようにしてやれなかったことが、シンには不甲斐なくて仕方なかった。





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