episode5『仲直り・前編』
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言うように同じ年には到底見えないほど大きかった。
その右腕にあるのは、魔鉄製の腕輪。彼がOI能力者であることを示す証。
「あ。ごめんよ、驚かせちゃったかな」
「……いい。それより、何?」
無論、シスターから彼が海外の製鉄師達とは全くの無関係である事は聞いている。ヒナミとてそれはよく理解しているのだが、一度感じてしまった彼当人に対する恐怖というものはやはり薄らいではくれなかった。
どうしても怖いのだ。自分の勘違いが何か彼の逆鱗に触れてしまったのかもしれないし、それに関して彼には悪い事をしたという自覚もある。けれど、あの恐ろしい怒鳴り声と異様な怪力を見てしまうと、どうしても彼の製鉄師達の姿がちらついて体が委縮してしまう。
「まず謝っておきたくってさ。前、怒鳴っちゃっただろう?」
「……それも、私が悪かったことだから、いい。ごめんなさい」
「いや、君は悪くないよ。僕の方こそ配慮に欠けていた、ごめん」
目を伏せて頭を下げるシンの姿に、すこしヒナミが後退る。そんなヒナミの様子を見かねたのか「まいったな」と頬を掻いたシンは、片手に下げていたレジ袋を探る。
「手、出して」という彼の言葉に従って手のひらを差し出せば、何やらひんやりとした感触が落ちてくる。何かと思って見てみれば、それはこの時期にはあまり見ない代物だった。
「……アイス?冬なのに?」
「む、冬のアイスも結構美味しいんだよ?それも割と奮発して買った高めのやつだから、味も保証するし」
はいこれ、と差し出された使い捨てのスプーンを恐る恐る受け取れば、シンもまたレジ袋から取り出したアイスのカップを開ける。彼もまた小袋を破ってスプーンを取り出すと、幸せそうな顔でその一掬いを頬張った。
困惑するヒナミに食べないの?とでも言いたげな表情で首をかしげるシンに、ますます意味が分からなくなる。彼の目的が分からない、彼だってこんな面倒なことになる相手に関わるメリットはないだろうに、なぜわざわざヒナミに構うのかがわからなかった。
ともかく、促されるままにアイスを口に運ぶ。口に広がる優しい甘みっとバニラの風味がすうっと鼻を通って、冷たくとろりとした舌触りが心地いい。久々に口にした美味しさに、自然と頬が緩む。
「……あまい」
思わず漏れたそんな声に、シンがニッと笑う。その顔を見てようやく自分の表情が緩んでいたことに気が付いて、少し顔が赤くなった。
「……それより、何の用なの。『まず』って、さっき言ってたでしょ」
「……あはは。やっぱり耳聡いね、君は」
バレちゃったか、といった顔で苦笑する彼はアイスの入ったカップを裏返した蓋の上に乗せると、木製の使い捨てスプーンをアイスの小山に刺す。少し言い淀むように視線を揺らしたシンは
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