episode5『仲直り・前編』
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ていたと聞く。それが今日に限って居ない、となるとその要因は明白だろう。
(……そりゃ避けられるよなぁ)
素性の知れない相手が隠している筈の本名を知っていて、しかも本人の事情が事情。一応シスターがフォローは入れてくれているらしいが、それでも疑惑が綺麗さっぱり晴れるなどあり得ない。加えてファーストコンタクトがあのザマでは、仲良くしようといったって無理があるというものだ。
らしくもなくカッとなってしまった。彼女の事情を鑑みれば、あの子に悪気なんてないのは分かり切っていることなのに。
「……やっぱり気になる?ミナちゃんの事」
本当に小さな、辛うじてシンに聞こえる程度の声音ではあるが、隣に座るマナが心配そうに声を掛けてくる。やっぱり彼女には隠し事は出来ないな、と内心で苦笑して、口に含んでいた米を飲み込んでから小さくこくりと頷いた。
「……僕のせいで随分と怖がらせちゃったからね。これからここで暮らすんだし、仲直りはやっぱりしておかないといけない」
「……うん、そうだね」
手元の目玉焼きの一端を切り分けて口に運びつつ、マナは続けて「そうしたほうがいいよ」と微笑む。何かと難儀はするかもしれないが、それでもこの先ギクシャクしながら暮らすよりはずっといい。
後でシスターの部屋を訪ねよう――そんなことを考えながら、今は一先ず久しい病人食以外の食事に集中しようと、味噌汁の入った椀をぐっと持ち上げることにした。
――――――
ぺら。
そんな紙をめくる音が、静かな室内で小さく反響する。
遠くからは子供たちの遊ぶ声が聞こえてくる。先ほどまでは少しもそんなことはなかったのだが、きっと勉強時間が終わったのだろう。声は遠く小さいので決して五月蠅くはない、本に没頭するには良い塩梅だった。
本の題は『製鉄師と魔女』。題そのままに、製鉄師と魔女という概念の成り立ちと歴史、そしてその特徴やそうなるための方法などが記されたモノだ。
曰く、製鉄師となった者は『魔鉄の加護』なる恩恵をその身に受けるという。その強度は製鉄師によって様々だが、最低ラインとして保障されている事実が一つ存在する。
――それは、製鉄師達は製鉄師である限り、製鉄師やOI能力者を除くあらゆる手段では傷一つ与える事が叶わなくなる、という事だ。
さらに言えば、OI能力者でもダメージは与えられるとはいえ、決して決定打にはなりえない。製鉄師を倒すためには、いかに相手が貧弱な力しか持っていなくとも、製鉄師でなければ倒せない。
これこそが、かつてラバルナ帝国が全世界を手中に収めた秘密。この力に真っ先に辿り着き、その方法を独占した帝国に、通常兵装で対抗するなど不可能だ
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