純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 25
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vol.32 【遅れて来た○○〇〇○】
百合根感謝の日を無事に見送った王都内は、前日・当日と比べて人通りが少々減っている。
百合根を売り込みに来ていた生産者や商人、祭日をきっかけに親戚同士で集まっていた一般民達が、通常通りの生活に戻っていったからだろう。
思い思いの時間を存分に堪能したと思われる都民の顔は、どこか疲労感を滲ませながらも幸福感で満ちていた。
冷めやらぬ熱気そのままにゆったり流れる人波の中を、それでも孤児院へ向かった時よりはずっと速く進み。
プリシラ一行が中央教会に帰着したのは、昼少し前の頃。
あらかじめ早馬で連絡を受け取っていたセーウル王子とミートリッテが、噴水の前でプリシラとベルヘンス卿を出迎え。
一同は、一見和やかな空気を引き連れて、二階の会議室へ移動。
双方、特に問題がないことを確認した上で、事務手続きを完了させた。
事後処理用に必要な書類の最後の一枚に二人分の名前が並んだところで、室内に居る四人の肩から余分な緊張感が抜けていく。
「一日半を越える代理、ありがとうございました。ヴェルディッヒ殿下方」
「プリシラ嬢方もお疲れ様でした。いやしかし、司教方も信徒の皆さんも、大変な働き者ですね。私にも手伝えることはないかと探していたのですが、却って気を遣わせてしまったようで。プリシラ嬢の代理を務めるどころか、実質的な休暇をいただいてしまいました。なんだか申し訳ない気持ちです」
十枚程度の書類を机の上で整えながら、正面に座っているプリシラとその背後に控えているミートリッテへ、裏が無い笑顔を向けるセーウル王子。
裏があるのは働き者と称された信徒達のほうだと知っているプリシラは、予想通りの反応にふんわりと優しく微笑んだ。
「王家の方々は、常日頃からお忙しい身の上。わずかでも息を抜けたのなら良うございました。教会の信徒達も、頑張った甲斐があるというものです。ねえ、ミートリッテ(殿下を教会内外でうろつかせてたの)?」
「はい(私に、殿下の行動を制限できるだけの権利はありません)」
(ロザリア様方は)
(先日、私の部屋に結界? を張られたとかで、万が一誰かが踏み入っても皆様が見つかる心配はないと仰っていました。詳細は、ロザリア様ご本人にお尋ねください)
(そう。分かったわ。ひとまず、ロザリア様の御配慮に感謝しなくてはね)
(はい)
会話に乗じてさりげなく目線と確認を重ね、軽く頷き合う上司と部下。
この間、一秒の半分の、約半分。
元は努力家の域を出ない一介の庶民だったミートリッテも、今では立派な化け物級貴族の一員だ。
騙し合い化かし合いの頂点に立つ王家の人間と、彼に仕える騎士でさえ、二人の相槌には疑問を抱かなかったらしい。
もっとも
「息抜きと
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