三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第35話 痛覚
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のに対し、シドウの運動量は徐々に落ち、鈍くなっていく。
ティアは無意識のうちに、木の陰から出てしまっていた。
その事実に気づいても、元の位置には戻らなかった。
「こらー! シドウ! 何苦戦してんの! さっさと終わらせて実験場に行くんでしょ!」
声の限り、叫んだ。
* * *
雨が、わずかに降り始めていた。
もともと強かった風はさらに荒々しさを増し、ときおり突風に近いものも交じるようになった。
ペタンとその巨体を落としていたシドウ。
戦いが終わった彼の、全身の傷。それらすべてに回復魔法をかけ終えたティアが、最後に頭部へと近づき、頭を撫でる。
「よーし、よく頑張りました。えらいえらい」
シドウのまぶたが、少し落ちた。
「なんか怖い人が怒ってるのが聞こえたから、頑張ったよ」
「あんた変身すると耳いいもんね!」
ティアはそう言いながら、撫でていた手をグーに握ると、バコンと頭部を殴った。
「痛い」
少し落ちたままになっていたシドウのまぶたが、さらにゆっくりと落ち、目がつぶられた。
「前も思ったんだけど、こういうのってドラゴンの姿でも痛いの?」
「うん。痛いよ」
「へー」
「でも、痛くないとだめなんだよな、きっと。痛いからいいんだと思う」
「うわあ。また変な趣味増えたの?」
「……言うと思った」
シドウは目を開けた。頭部だけ少し持ち上げ、あたりを見回す。
「いっぱい、焼いちゃった」
焼け野原に近い状態だった。
この地方の季節柄、木も草も水分が多かったおかげで延焼はしていない。が、草むらは禿げ上がり、まだ煙をあげている樹木もある。
「あー。なんとなくシドウは気にしてるんだろうなって思ってた。今回は仕方ないと思うよ? 戦わないと殺されるわけだし。生きるためってやつでしょ」
ティアも周囲を再確認し、またシドウの頭部に拳をぶつけた。
痛いと抗議しつつ、シドウが次に目を向けたのは、前の地面に寝ている人型モンスターだ。
死んではいないが、失神しており、意識はない。
防具はキズだらけ。布地も焦げている。
またシドウのまぶたが少し落ちた。
「今の戦いで気づいたんだけど。俺、戦うのはあまり好きじゃないみたいだ」
「はい? 今気づいたの? 会った最初の日から、私の目にはそう見えてたよ?」
ティアが呆れたように肩をすくめる。
「で、どうすんのよ、この人」
とどめを刺しておくの? とは聞かなかった。
もちろん、その選択肢がないことをティアは知っているからだ。
「うん。わざわざここで俺を待っていたくらいだし、王都に忍び込んで無差別に人殺しをしたりはしないはずだよ。今
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