三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第35話 痛覚
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左わき腹にかけて滑り落ちるように、大きく切り裂いた。
次々と割られる鱗。傷口から血が噴き出していく。
「なのに俺が育つ前に、大魔王様が勇者に倒されてしまったと知らされた。あんなに虚しいことはなかった」
着地したエリファスに向けて、シドウは右爪での攻撃を繰り出す。
それは盾で止められたが、続けて左爪でフェイントをかけつつ、炎を吐く。
マントで受けられたが、今度は確かに彼の体をとらえた。
とらえた、はずなのに――。
「だから、ダヴィドレイから大魔王様の復活計画を聞いたときは心が踊ったよ」
彼はまったく苦悶の表情を見せなかった。
シドウは体を回転させて大きく爪を振りかぶるように見せかけ、その勢いで長い尻尾を使い、攻撃を繰り出した。
尻尾で攻撃するのは初めてだ。さらには彼の死角からの攻撃。まともに命中した。
エリファスが吹き飛んだ。
が、空中でバランスを取ってしっかりと着地すると、すぐにシドウへと向かって地面を蹴ってきた。
どんなに高級な耐火マントであっても、ドラゴンの炎をまともに受ければ相当な熱さを感じるはず。それに加え、尻尾での攻撃をまともに受けてダメージがないはずがない。
なのに、動きが落ちない。
「お前は勇者ではないが、大魔王様の復活を妨げる可能性がある存在……。俺は嬉しい。生まれてきた意味があったと、やっと言える」
その顔には笑顔すら浮かんでいた。
客観的に見るならば、一匹と一人の戦い。当事者たちから見れば、二人の戦い。
ティアは少し離れた木の陰で、それを見守っていた。
開戦前に両者が間合いをはかっていた際、シドウは長い尻尾の先をティアのほうに向け、チョロチョロと動かしていた。
それがメッセージになっていることに気づいていたティアは、シドウから距離を取り、エリファスとの戦いに邪魔にならないところまで動いていたのである。
銀髪の人型モンスターが持つ大剣と盾。そしてドラゴンが持つ硬い爪。ぶつかり合う音が響き続けた。接近している嵐の影響と思われる風が激しく?を打っていても、それははっきりと聞こえてきた。
何度もシドウが攻撃をもらってしまっていたことは、ティアに衝撃を与えた。
そんなことはこれまでの旅で一度もなかったからだ。
シドウは炎での攻撃も繰り出していた。
吐いた炎は、小動物や豊富に生えている草木を、無差別に、かつ広範囲に焼いてしまう。
シドウの性格がそれを良しとするはずはない。
それだけ敵が強く、余裕がないのだろう――ティアはそう思った。
戦いは長く続いた。
エリファスのほうも無傷ではないと思われ、一進一退のようにも見えた。
だが、エリファスが相変わらずの俊敏な動きを続ける
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