三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第35話 痛覚
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湿った強い風が、密に生える草とまばらに生える常緑樹を揺らしている。
その中を走る街道。
ドラゴン姿のシドウと、銀髪の人型モンスター・エリファスが対峙していた。
お互い間合いをはかったまま、ジリジリと横に動き、草地のほうへと入っていく。
やがて、エリファスが跳んだ。
人間とは比べ物にならないほどの跳躍力だった。
上から首に向かって振り下ろされてきたであろう大剣。それを、シドウは体表で最も硬い部位である爪で受けた。
高い音が響く。
シドウはさらに力を込め、エリファスを弾き返した。
彼は着地すると、すぐに地を蹴って突進してくる。
そこに右爪で払うような攻撃を出したが、ジャンプしてかわされた。
彼はそのままシドウの翼の骨の部分を中継し、素早く背中に飛び乗ってきた。
「ガァッ!!」
太く大きな音が、戦場となった草原に響く。
ドラゴン姿のシドウから出た声だった。
「入ったな」
エリファスの満足そうな声。
彼の大剣が、背中に深々と刺さったのである。
「この剣は人間の勇者を鎧ごと葬るために設計されたものだ。ドラゴンの鱗など問題ではない」
刺した剣を握ったままのエリファスに対し、シドウは爪を背中に回し攻撃した。
が、それを見た彼はすぐに剣を抜く。また高く跳躍してかわし、シドウの背後に着地した。
シドウはそれを追いかけようと体を動かしたが、その瞬間に傷口が痛んだ。
またうめき声が漏れる。
今までドラゴンの姿でダメージを負ったことがなかったシドウ。未知の痛みだった。
「痛いか? 俺は痛みを感じにくい体質だ。たとえドラゴンであろうが、痛がりである以上、傷を負うたびに動きは悪くなっていくだろう。流れはこっちだ」
エリファスの言葉には応じずに、シドウは爪を振るった。
彼はそれを左手の盾でしっかりと弾く。
「アルテアの民は非力だ。それこそ人間よりもな」
そしてシドウが次の攻撃を繰り出す前に、動いていた。
今度は直線的な突進。
それを見た、シドウは動かしかけてた爪をとめて炎を吐く。
ところが、やはりエリファスのほうが速い。
斜め横への跳躍でかわされた。
「だが俺は、アルテアの民最強の戦士となり、人間の勇者を倒すという使命を負っていた」
彼が引き続き突進でシドウに迫る。
「人間の勇者の鎧は、あらゆる魔法を弾くとされた。だから俺は必死に体を鍛えて、必死に剣の修行をした!」
続く炎も、跳躍でかわされる。
彼はシドウの背よりも高く跳んだ。
「そうしたら、他の者より力がどんどん強くなっていった……この剣を持つことができるくらいになっ」
落ちる速度も利用し、シドウの体を背中側から
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