第63話 太陽が曇る時、西風が吹いて空を晴らす
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「……何か用?」
「さっきのお嬢ちゃん……エステルちゃんやったか?抑え取るようやけど相当答えとるで。何があったかは知らんけど受けいられないくらい辛い事があったんやろうな」
「貴方……」
出会って少ししか立っていないのにエステルの状態を見抜いたの?
「これでも神父やからな、ああいう風に辛そうな事を隠しとる人を沢山見てきたんや」
「……わたしは何も言ってあげられなかった」
「ええんやないかそれで」
つい弱音を吐き出してしまったがケビンはニコッと笑うと話を続ける。
「人の苦しみなんか聞いたところで共感はできても100%理解することなんかできへん。そういう時は唯側にいて悲しみを受け止めてやるだけでもその人は大層救われるもんや」
「……意外。神父らしいことも言うんだね」
「いや本物の神父やから」
……ちょっと警戒しすぎたかも。少なくともケビンは本気でエステルを案じているみたいだしわたしもピリピリしすぎたかも。
「サンクス、ケビン。わたしもどうすればいいか何となくだけど分かったよ」
「そりゃ良かったわ。なら早く行ってやりな、友達なんやろ?」
「うん、大事な友達」
わたしはケビンにお礼を言うと一目散にエステルの元に向かった。ブライト家は町の郊外にあるようで途中で看板を見つけたわたしはそっちに向かうと森の中に立派なお家が見えた。
「ここがエステルの家……エステルは何処かな?」
鍵は開いているようで一応ノックして家の中に入るが誰もいない、でも二階から気配がするしそっちに行ってみよう。
二階に上がって部屋を覗いていく、エステルは……あっ、いた。一番奥の部屋……男の子の匂いがする、ヨシュアの部屋かな。
「エステル……」
「あっ、フィー。ごめんね、あたしったら急いできちゃったからフィーを置いてっちゃったわね」
「ん、それはだいじょーぶ。それよりも……」
「そうだ、フィーもヨシュアを探すの手伝ってくれない?彼ったらかくれんぼでもしてるのか姿が見えないのよね」
「……」
「あたしは二階を探すからフィーは一階を……」
「エステル!」
わたしはもう何も言えなくなってエステルに抱き着いた。
「エステル、もう我慢しなくていいんだよ?」
「我慢ってあたしは別に……」
「大切な人がいなくなるのは辛いよね……わたしもリィンがいなくなった時凄く辛かった。だからもう我慢しないで……」
わたしもリィンが教団の奴らに誘拐されてしまった時凄く悲しかった。ケビンは共感は出来ても理解はできないと言ったがそんなことはない、だって同じ悲しみをわたしは知っている。だから今は少しでもエステルを癒してあげたい。
「あたし
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