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ある晴れた日に
567部分:鬼め悪魔めその三

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鬼め悪魔めその三

「世の中絶対に関わってはいけない相手がいるんだ」
「関わってはいけない相手って?」
「そうだよ。そして」
 言うのだった。
「彼がそうなんだよ」
「その吉見って人?」
「八条グループは前ね、大変な騒ぎになったことがあったんだよ」
「大変な騒ぎって」
「咲は覚えてるかしら」
 母が怪訝そうな顔で娘に問うてきた。
「ほら、パパが何ヶ月も遅かった時あったわよね」
「ええ、そういえば」
 小学生の時のことだった。何となく覚えている。
「あの時ね、八条グループはね」
「何かあったの?」
「訴えられていたのよ」
 こう娘に話すのだった。
「おかしな団体にね」
「おかしな団体って」
「訴えている内容は妙なものだった」
 今度は父が言ってきた。
「しかしその団体に弁護士についていたのが」
「その人だったの?」
「そう、吉見兵衛だ」
 彼だというのである。
「あれは悪魔だ」
 父は忌々しげな顔で述べた。
「どんな悪事でもする。とんでもない奴だ」
「悪魔って」
 父の何時になく険しい言葉に唖然としてしまった咲だった。
「そんなにとんでもない人なの」
「絶対に関わらないことだ」
 娘にまた言うのだった。
「八条グループも大変な騒ぎになったからな」
「それによ」
 母がここでまた娘に言ってきたのである。
「その人だけじゃなくてね」
「その人だけじゃなくて?」
「あの男には息子がいる」
 またここで父が言ってきたのである。
「息子にも注意することだ」
「どうしてなの?」
「お父さん」
 兄が父に言ってきた。
「あのことも言う?どうする?」
「そうだな」
 一呼吸置いてから息子に答える父だった。
「言っておくか」
「そうだね、じゃあ」
「咲、いいか」
「え、ええ」
 その父の厳しい声に応えるしかなかった。
「今から言う話は絶対に覚えておきなさい」
「どうしてなの?」
「御前の安全の為だ」
 だからだというのである。
「その為にも。知っておいてくれ」
「その為って」
「そしていいか」
 今度は兄が妹に告げてきた。
「絶対に近寄るな」
「その吉見って人になのね」
「そして身の回りに用心するんだ」
 話はいよいよ剣呑なものになってきていた。
「いいな、絶対にだ」
「一体何なのよ」
 一変した空気と言葉に戸惑う他ない咲だった。
「そんなにとんでもないことなの?何がどうなってるのよ」
「話を聞きなさい」
 父の言葉は深刻そのものであった。

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