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戦国異伝供書
第四十九話 小田原へその六

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「長尾殿をそれがしの養子に迎えたいのです」
「上杉様の」
「そうです、上杉家の次の主にです」
 まさにというのだ。
「なって頂きたいのでが」
「それは恐れ多い」
 恐縮を以てだ、景虎は憲政に応えた。
「流石に」
「だからですか」
「その申し出は」
「いえ、長尾殿ならば」
 憲政も退かずに言う。
「上杉家の主にです」
「相応しいですか」
「その武勇は」
 まさにというのだ。
「上杉家、ひいてはです」
「関東管領にですか」
「はい、その役目にもです」
「わたくしにそこまで行って頂きますか」
「心から、ですから」
「そうですか、ですが」
「お返事は、ですか」
「今すぐには」
 こう言うのだった。
「暫しです」
「考えられたいですか」
「はい」
 その通りという返事だった。
「宜しいでしょうか」
「確かに。このことはです」
 上杉家即ち関東管領を継ぐ、このことの大きさは他ならぬ憲政自身が元tもよくわかっている、それでだ。
 景虎の心を汲んでだ、こう返した。
「それならば」
「はい、暫しで」
「お考えになって下され」
「そうさせて頂きます」
「ですがそれがしに子がおらぬのは事実で」
「次の上杉家の主は」
「これといった者がおりません」
 このことは事実だというのだ。
「ですから」
「このままではですか」
「はい、まさにです」
「上杉家は絶える」
「そうなります」
 このことは事実だというのだ。
「ですから」
「わたくしにですか」
「長尾殿なら当家を継がれ」
「関東管領にもですか」
「充分な方です」
「そう言われますがわたくしは」
 ここで景虎は曇った顔になった、そうして憲政に自身のこのことについてその顔でこう言うのだった。
「家の格が」
「長尾家は、ですか」
「当家は只の守護代です」
 それに過ぎぬというのだ。
「そのわたくしが上杉家、ひいては関東管領なぞと」
「それはそれがしがです」
 上杉家の当主の自分がとだ、憲政は言うのだった。
「認めます」
「上杉家を継ぐことを」
「それがしが言えば」
「家の格もですか」
「何ということもありましょう、よくある話ではありませぬか」
「名家の跡を他家の者が継ぐことは」
「格の落ちると言われている」
「だからですか」
「このことはお気になさらずに」
 全くという言葉だった。
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