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ある晴れた日に
560部分:もう道化師じゃないその十一
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もう道化師じゃないその十一

「明日ね」
「え、ええ」
 弱い声で頷く奈々瀬だった。
「わかったわ」
「時間をかけてね」
 今度は明日夢が告げてきたのだった。
「やっていけばいいから」
「明日また行こう」
 今言ったのは加山だった。
「明日ね」
「毎日通って会い続けていたら」
 千佳も言う。
「心は伝わるわよ」
「そうだよな。だったら」
「行くしかないわね」
「そうよね」
 皆今の千佳の言葉から結論を出した。
「だったら明日も」
「まずは明日から」
 こう言い合い明日また未晴の見舞いに行くことを決意するのだった。彼等もまた真剣にこれからのことを考え動こうとしていたのだった。
 そして次の日実際に未晴の見舞いに出た。そのうえで彼女と正道を見るがやはり未晴の反応はない。目は相変わらず虚ろなままである。
「何かさ」
「何?」
 暗い病室の中で明日夢が言った。凛がそれに応える。
「今の未晴だけれど」
「ええ」
「今にも動いてくれそうね」
「そうね」
 明日夢の今の言葉に静かに頷く凛だった。
「目は開いてるし。上体は起こしてるし」
「動いて起き上がって」
 そしてさらに言う明日夢だった。
「こっちを振り向いてくれそうな」
「それだったらね」
 ここでこれまで見たこともないような切ない顔になる凛だった。
「どんなにいいか」
「そうなの」
「未晴をこんなふうにした奴、絶対に許さないわよ」
 俯いて今にも泣きそうな顔になっての今の言葉だった。
「何があってもね」
「そうね」
 明日夢は今の凛の言葉を受けて頷いた。
「凛にとってはね」
「未晴に何かあったら絶対に許さないって」
 凛はここでさらに言った。
「決めてたから」
「じゃあ。未晴がまた元に戻る為には」
「そうよ」
 それについてもなのだった。
「何があってもね」
「そうよね。皆同じよね」
 明日夢はここでわかった。未晴への気持ちは五人が彼女に抱いているもの程では流石にないがそれでもかなり強くなっていることに。気付いたのである。
「それはね」
「明日もここに来るわ」
 凛は俯きながらも確かな声を出した。
「絶対にね」
「そうね。来よう」
 明日夢も凛のその言葉に頷いた。
「明日ね」
「ええ。ねえ音橋」
「ああ」
 正道は彼等の前に座っていた。そのうえでギターを奏で続けている。やはり未晴から離れずそのうえでギターから手を放さないのだった。
「私達は今日はこれで帰るけれど」
「また明日な」
「私達も歌っていいかしら」
 こう言ったのだ。
「よかったら今からでも」
「思うようにすればいい」
 背中で語る。それ以上は言わないが確かに言ったのである。
「そちらのな。思うようにな」
「そ
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