第二章
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「ここにおる」
「このヨハネスブルグに」
「そやからまずはな」
「この街の中で、ですね」
「探そうか」
「それでは」
こうしてだった、二人は。
そのドワーフの老人の捜索を開始した、まずはヨハネスブルグの各地を歩いてそうして探した。だが老人は見付からなかった。
しかし街の北東のある場所に来てだ、ゴーディマーはどうかという顔になってカマンダに対して言った。
「何かな」
「この地域はですね」
「妙やな」
「ほんまに。何か」
カマンダは街の様子を見た、見ればだった。
行き来する人々の顔が暗い、しかも背中を丸め俯いて歩いている。それはまるで絶望の底にある様だ。
店が開いていても客はなく店の者達も死んだ様な顔になっている。それでカマンダも言うのだった。
「生気がなくて」
「全くな」
「この世界のヨハネスブルグは治安がええだけでなく」
「賑わってる」
「商業や工業でも。ですが」
「この地域はな」
「まるで底なしの不況に陥った様な」
「そんな状況やな」
「これはどうしてか」
カマンダも首を傾げさせることだった。
「わからないですね」
「そやな・・・・・・!?」
ここでゴーディマーはふと気付いた、何とだ。
街を行き来する者達そして店の者達が日の下に出た時に必ず出て来る影、その景がだ。
皆妙に薄いのだ、ゴーディマーはその景を見てカマンダに言った。
「影が薄いな」
「そういえば」
カマンダもここで気付いた。
「どの人も」
「わし等の影は普通や」
見れば自分達のものはそうだった。
「この通りな」
「左様ですね」
「けれどや」
「他の地域の人達は」
「何でかな」
それこそというのだ。
「薄いな」
「おかしいですね、明らかに」
カマンダはリザードマンの前に出た口の下顎に手を当てて述べた、ここでサプール故の気取りを見せた。
「これは」
「同じ地域におってこれはな」
「日の光は同じである筈なのに」
「それでもや」
「これは明らかに異変がありますね」
「影が薄ければ薄い程」
ゴーディマーは人々をさらに見つつ言った。
「生気がない感じがするな」
「では影が完全に消えたら」
「死ぬかもな、陰が薄くなる程動きも遅くなってるし」
「そう言われますと」
「お年寄りも気になるけど」
「このこともですね」
「ちょっと見るか」
こうカマンダに言うのだった。
「そうしよか」
「それでは」
カマンダも頷いてだ、その地域を歩いていった。するとそこで行方不明になっていて自分達の依頼の対象であったドワーフの老人が路地裏で俯いて座っているのを見た。だが。
老人の影は今にも消えそうだった、ゴーディマーはすぐにカマンダと共に彼の傍に来て声をかけた。
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