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仗助にもしも双子の姉がいたら?ネタ
惑う殺人鬼(side:吉良吉影)
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かけているカフェオレに注がれている。それが妙に気になった。

 今思えば、やはり会うべきではなかっただろう。

 たわいもない会話の末に、こちらを見てくれたことにホッとしている自分がいたことに内心かなり焦ったものだ。顔に出ていなかったようで、ミナミは私の内心に気づいていないようであった。運が良い。

 私は、声を聞くべきではなかった。そもそも会話をしたのが間違っていた。

 そもそも、なぜ彼女の目を褒めているのだろう?っと自分の意思に反して喋り続けている自分の口が信じられなかった。

 すると、あろうことか、私の声が綺麗だと、ミナミは言ったのだ。

 そんなことを言われたのは、生まれてこの方一度も無い。思わず思考が停止しかけてしまった。

 このままでは、いけないと思考を切り替えることに成功した私は、店のマスターが奥に引っ込んだ隙にと、ミナミの手に触れたが……。

 なぜか私は、彼女の手を?ぐ気になれなかった。

 僅かに荒れていたからか? 触ってみないと分からない程度だが、僅かに手の表面が荒れていた。

 洗剤が合わなかったのだろうと言っていたので、思考を切り替え、手に優しい洗剤を選んであげようと言っていた。

 ふむ…、それは間違っていなかったはずだ。どうせならば、とびきり美しい状態で手に入れたい。

 それにしても、甘い香りがする。それがミナミの前にあるカフェオレからだろうっと思い、それを皮切りにたわいもないつまらない日常会話をしていた。

 あの香りは…、砂糖をたっぷり入れたカフェオレの香りではないと気づいたのは、鞄の中の携帯電話が鳴ったときだった。

 香水では決して実現できないであろう、瑞々しい少女の自然な香りだ。

 そして急用ができてしまった私は、いまだかつてない状態の自分に焦るあまり、ミナミのカフェオレ代も含めて支払い、また、会ってくれるかと、聞いてしまった。

 返事は、はい…、Yesだ。

 店を後にした後、会社に向かいながら、私はグチャグチャな思考をまとめようとした。

 なぜ、殺さなかった? あれほどに欲した『手』がそこにあったというのに。そうだ、あの『青』がいけなかったのだ。ミナミという人間を構築している全てのパーツがいけないのだ!

 私は、脳から離れぬミナミのすべての形に、発狂しそうな気がした。

 仕事を終えて、自宅に帰り、シャワーを浴びて思考を正常に戻そうとした。

 本来の予定だったミナミの『手』を手に入れるため、一度は『手を切った』前の『彼女』を拾い上げ、私は思考した。

 ミナミという存在を越える手を見つけなければと。

 そうしなければ、私の人生は破綻する。私は、そう予感した。

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