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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
幼馴染との契約
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ここ東京武偵校には、3大危険区域と呼ばれている場所がある。しかもそれは辺鄙(へんぴ)だとかそんな話ではなくて、実にこの武偵校の中枢にもなる場所であることに相違なかった。
とはいえ、関係者を除けば好んで近寄る者は少ない。『どう見ても危険でしょ』めいた雰囲気を醸成させているのは勿論のこと、直にその空気を肌に受けようものならば……。
東京武偵校生の彼等彼女等は、一様に口を揃えてこう告ぐ。「『強襲科(アサルト)』、『地下倉庫(ジャンクション)』、『教務科(マスターズ)』には干渉しない方が良い」──と。

強襲科は、東京武偵校の専門科目のうちの1つだ。卒業時の生存率は97.1%──そこから生まれた異名が、『明日無き学科』。訓練も依頼も他科と比較すると過激なもので、それはそれは好んで近寄る者も少ないことだろう。かくいう自分は、強襲科所属だけれども……。

地下倉庫は学園島の地下に存在する。倉庫とはいっても、それは体外用の穏和な表記に過ぎない。保管されているものは、銃弾に始まり対戦車擲弾まで──文字通り火薬庫といえるだろう。

教務科は、単なる職員室だ。職員室、なのだけれど……それは一般的な学校の話。何の戦闘力も無い、平々凡々な人間教師の集まり──そこが職員室。けれど武偵校の教職員は、だいたい普通ではない。職員室ではなく『者狂いの詰め箱』と表現すれば、分かりやすいのだろうか。
例えば、強襲科顧問の蘭豹は香港マフィアの愛娘だ。我がクラス担任の高天原先生は、『武偵校の良心』と呼ばれながら元傭兵という噂もある。校長でさえも不穏な話があるのだ。

──そんな教務科のダクト内に今、自分たちは潜入している。


「……どうしてお前の好奇心ごときで、こんな所に来なきゃいけないんだよッ」
「しっ、少し静かにしなよ。本当に見つかるかもしれないじゃない」
「『好奇心猫を殺す(Curiosity killed the cat)』とは言うけれど……。キンジは猫じゃなくて、さしずめ猫に捕まって食べられる鼠ね。最後までチュウチュウ鳴き声がうるさいのよ」


──アリアが意外に辛辣だった。
そんなこんなで教務科のダクト内を、自分・キンジ・アリアの3人1列で匍匐前進と相成っている。自分とアリアは現役の強襲科生、キンジは元強襲科生のため、訓練を積んだ3人での匍匐前進での移動は割と潤滑に進んでいた。とはいえ視界は薄暗く、幅もそんなに広くはない。ましてや天井裏の手入れなどは論外だから、埃臭いとかカビ臭いとかいうのは我慢するしかなかった。

しばらく匍匐前進を続けていくと、頬のあたりを生温い空気が撫でていったように感じた。ダクトはまだ直進している。薄闇の中で目を凝らしてみると、どうやら通気口からその空気はやって来ているらしい。同時に洩れ出た室内の明か
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