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戦国異伝供書
第四十八話 去った後でその十

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 どうかという顔でだ、景虎に述べた。
「殿、つい前にです」
「信濃にですね」
「出陣されてで」
「みだりな出陣はですね」
「はい、国も民も疲れさせるので」
 だからだというのだ。
「出来る限りはです」
「わかっています、ですが」
「義の為にはですか」
「そうです、天下の公を守る為に」
 まさにその為にというのだ。
「わたくしは出陣するのです」
「私の為でなく」
「そうです」
 まさにというのだ。
「ですから」
「この度もですか」
「そうです、そして私は必ずです」
 出陣したからにはというのだ。
「必ずです」
「勝つと」
「この度も毘沙門天に祈りました」
 自らが信仰する御仏にというのだ。
「ですから」
「それでは」
「はい、必ずです」
 勝つというのだ。
「ですから」
「左様ですか、そしてそれがしも」
「来てもらいます」
 この度の関東への出陣もというのだ。
「いいですね」
「承知しました、ですが」
「みだりな戦はですね」
「このことはご承知を」
「涜武ですね」
 景虎は自らこの言葉を出した。
「それは」
「はい、ですから」
 それでとだ、直江は言うのだった。
「みだりにです」
「わかっています、わたくしも」
「左様ですね、殿は」
「武は本来は戦を止めるものです」
 こうも言う景虎だった。
「ですから」
「それ故に」
「はい、この度もです」
「上杉様のことがあり」
「出陣します。それは貴方もわかっていますね」
「無論。殿は私利私欲で動かれません」
 直江もわかっているのだ、このことは。
 だがそれでもとだ、こう言うのだった。
「ですがあえてです」
「わたくしに常にですね」
「このことは心に残して頂きたいので」
 それ故にというのだ。
「あえてです」
「そうですね、武は決してです」
「みだりに使うものではありません」
「それは国も民も苦しめる」
「そうしたものなので」
 だからこそというのだ。
「そのことは常にご承知下さい」
「はい、わたくしは戦であろうとも」
「敵が降ればですね」
「命は奪いません、また民達にもです」
 彼等にもというのだ。
「決してです」
「手出しはされないですね」
「戦は強者同士がするものです」
 これが景虎の考えだ、降った者は命を奪わないどころか傷付けたり辱めることも決してしないのだ。
 それでだ、こうも言うのだった。
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