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戦国異伝供書
第四十八話 去った後でその九
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「お伝え下さい」
「さすれば」
「すぐにお願いします」
 景虎は即答してだった、すぐに然るべき迎えの者を送りそのうえで関東管領である上杉憲政を迎えにやらせた、程なくしてだった。
 春日山城に気品のある顔立ちだが何処か弱々しい男が幾人かの者達を連れて景虎の前に現れた、迎え役だった本庄が景虎に話した。
「関東管領上杉様と家臣の方々です」
「よく来られました」
 景虎は主の座にいなかった、相手が関東管領であり自身が守護代に過ぎないという格の違いから自らヘリ下って挨拶をしたのだ。
「この度のことですが」
「はい、実は」
 憲政は景虎にあらためて話した。
「この度恥ずかしながら北条家との戦に敗れ」
「そうしてなのですね」
「長尾殿を頼ってです」
 そのうえでというのだ。
「こちらに参りました」
「ここにおられるならご安心下さい」 
 景虎は憲政と家臣達の安全を約束した。
「例え何があろうともです」
「それがし達をですか」
「お守りします、しかしです」
「しかしとは」
「北条殿のことです」
 景虎は今度は彼等のことを話した。
「関東管領である上杉様を攻めるとは」
「それは今にはじまったことではなく」
「はい、以前よりですね」
「それこそ北条家の初代である早雲殿からです」
 彼からのことであることを話すのだった。
「その時からです」
「上杉様を攻めておられ」
「関東で己が領地を増やし遂にです」
「上野まで、ですね」
 上杉家の領地であるこの国もというのだ。
「兵を進めてきて」
「そしてです」
「関東を手中にせんとしているとか」
「その通りです、相模と伊豆それに武蔵を完全に手中に収め」
 北条家はそうしているというのだ。
「上野から下総、上総にも兵を進めております」
「それではまさに」
 どうかとだ、景虎は憲政に話を聞いて怒った顔になり言った。
「東国のうち関東を己がものにせん様な」
「関東の公方様を擁しておられるので」
「しかしそれは」
「はい、飾りです」
 それに過ぎぬとだ、憲政も答えた。
「それが証にです」
「関東管領である上杉様を攻められている」
「左様です」
「許せぬことだとです」
 景虎は憲政に憤りを以て答えた。
「以前より思っていました」
「そうですか、では」
「皆まで言われることはありません」
 これが景虎の返事だった。
「わたくしが兵を率いて関東の乱れを正します」
「そうして頂けますか」
「義を見てせざるは勇なきであり」
 そしてというのだ。
「真の武士ではありませぬ」
「だからですか」
「この度はです」
 まさにとだ、景虎はさらに言った。
「お任せ下さい」
「左様ですか」
「すぐに出陣の用意にかかります」
 こうも言うのだ
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